エージェントベース・ゲーミングモデルによるエネルギー転換ゲームを構築し、実験を行った。電力事業者プレイヤーとアグリゲータプレイヤーが参加する電力市場において、電力販売価格、広告投資と、発電設備投資計画によって、電力事業者の意思決定が行われる。販売価格は、送配電事業者との需要・供給におけるインバランス精算によって価格調整が行われる。 一方で、小売プレイヤーと家庭・事業者などつなぐアグリゲータとして、需要家の電力需要を束ねて効果的にエネルギーマネジメントサービスを提供するマーケター、ブローカー、地方公共団体、非営利団体などが電力市場に参入してくることが予想される。アグリゲータは、デマンド・レスポンスやネガワット事業なども行い、スマートメーターなどを利用した先進的なエネルギー管理システムによる、さまざまなサービスを提供することが見込まれる。その結果、アグリゲータが両面性市場として市場流通を独占し、価格の決定権のみならず、利益配分の決定権を持つ可能性がある。 これらを検証するため、構築したゲーミングモデルでは、実際の参加者が発電事業者、電力小売、アグリゲータの各プレイヤーとしてゲームに参加するととともに、コンピュータ上のエージェントが多数の需要家エージェントとして自律的に市場に参加する。加えて、政府エージェントが、予め与えられた市場ルールに基いてインバランス精算を行なう。 実験の結果、電力需要者としての消費者のエネルギー志向が、電力供給者の発電投資に大きな影響を与えること、また原子力エネルギーへのリスク判断が高くないことなどが見出された。 これらによって、人や事業者の意思決定構造を分析することが可能となり、再生可能エネルギーなどの普及を促す社会エコシステムと適応行動に関する有用な知見を得ることができた。
|