研究課題/領域番号 |
26330360
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研究機関 | 釧路公立大学 |
研究代表者 |
皆月 昭則 釧路公立大学, 経済学部, 教授 (90363712)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | スマートフォン / 危機管理 / 医療情報 / 周産期 / マタニティ / 妊婦教育 / 保健師 / 地域 |
研究実績の概要 |
北海道は東北6県を上回る広大な面積を有する.研究では全国で最も産科の減少が進行している地域のマタニティの「つながり」支援方法を模索し,マタニティ居住地周辺に産科が消滅した地域に注目し,マタニティの受療行動支援システム構築に向けている.一刻を争う産科救急では,マタニティ自身の体調予見の気づきや受療タイミングの意思決定が遅れると,受療前に母子の生命が危険な状態に直面する場合もある.2年間の研究では,長距離移動マタニティの受療行動支援システム構築に必要な要件導出をまとめ,GISの地理空間情報値の計算による受療行動ルートのシミュレーションと対象地域の実走行による調査をした.システム構築では,順次実現可能な要件を実装し地域に実践投入した.システム構築に向けた実践の第1フェーズでは,受療前のセルフメディケーション用のスマートフォンアプリケーションを開発し,長距離移動が必要になる地域のマタニティに配付した.第2フェーズは,第1フェーズのアプリのフロントエンド機能にバックエンド機能(クラウド環境)を追加し,家族や地域の人々がマタニティの思いに関心を向ける共同支援行動の可能性の期待を試みた.各フェーズ試み的な実行では,「KODOプロジェクト」の活動によって地域の人々の共感や理解を得た.活動の立ち上げから2年間,医師不足が深刻な北海道の地方を起点に開始したシステムおよびアプリケーション開発は,プロジェクトの実施の評価として,研究協力者の土田栞が内閣府の平成27年度「女性のチャレンジ賞」で表彰され,研究代表者の皆月昭則が北海道から「北海道男女平等参画チャレンジ賞の輝く北のチャレンジ支援賞」で表彰された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
受療行動支援の第1・第2フェーズでは,アプリを配付・検証しながら改良し,評価・普及させるためのプロジェクトを設定した.2年間が経過した「KODOプロジェクト」は開発したアプリケーションを地域・社会環境へ投入し,開発途上でも長距離移動マタニティのためにソーシャルサポートとしてお産時期のマタニティ支援や行政訪問という方法を実施したことによって,地域課題を直接的に捉える研究として地域に理解されるようになった.プロジェクトの実施における主な活動内容は,マタニティへのサポート(計測ツールとしての活用の検証),行政訪問によるプロジェクト受け入れの反応とアプリの普及促進,陣痛データ共有をした家族や周辺の人々の親和性や思いやり行動促進による地域の長距離移動マタニティへのサポートが可能であるのか,釧路・根室圏内の全市町村で調査を継続してきた.
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今後の研究の推進方策 |
長距離移動マタニティの受療行動の意思決定には,マタニティや周辺家族の経験則的な知識が必要である.第3フェーズでは,マタニティへの行政情報発信機能として長距離移動の負担意識と早期の受診行動の必要性について,知識が得られやすいとされる行政主催のマタニティ講座の参加率向上と活性化の機会に着目した.講座は行政が実施しているが,マタニティの参加者が低いことが調査で明らかになった.対応策として行政は,郵送やホームページで参加を呼びかけているが参加率は改善されていない.開発したアプリの基盤機能にマタニティ講座の開催通知を動的に発信するような要件を導出した.アプリ画面の下部にタイムライン表示してマタニティの気づきや講座参加を誘うようなインターフェイスを試行的に実装した.アプリはバックエンドでクラウドに接続されており,「相談があれば電話くださいね」のメッセージなど1週間毎にマタニティに配信して,マタニティの安否確認など「元気サイン」をプッシュ通知するクラウド通信機能の実装を検討している.マタニティからのサイン確認は,行政側のクラウド管理画面で行い,サインがなければ保健師が電話または家庭訪問するような仕組みを提案する.これによって現状,妊娠中期に一度のみ保健師が時間を選んで電話をすることになっているが,従来よりも,マタニティと行政の保健師がつながることが期待される.調査をすると,泣いて行政にきたマタニティを保護するケースもあり,行政としては,マタニティの悩みにもっと早く気づき対応したという要望行動も聞かれた.これまで母子手帳を発行したら,手が届かなくなる現状を何とかしたいという行政側の保健師達の要望に添えるアプリの機能を第3フェーズで検討しており,道路管理者の情報やドクターヘリなどの産科救急連携も視野に入れていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
プログラミング開発ソフトについては,アシアル株式会社からライセンスで無償提供を受けるなど,当初の開発コストを下げることが達成された.
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次年度使用額の使用計画 |
アプリの改良と査読論文掲載費用に充当する計画である.
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備考 |
[内閣府]平成27年度「女性のチャレンジ賞」 <表彰式の模様が動画でご覧いただけます> (政府インターネットテレビサイトへリンクします)http://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg11954.html ※開始から2:00以降
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