本研究では,公共図書館が用意する各種サービスや環境を,一般の利用者がどのように利用して求める情報に到達しているかを解明することを最終的な目標としている。今回の研究においては,公共図書館利用者の情報探索行動に関する量的データの収集,分析方法を確立することを目的とした。 平成26年度には,位置情報システムと図書館利用者の情報探索行動に関する文献を収集し,図書館における情報探索行動研究を整理した。利用者の行動自体に関するデータを得たい場合,位置情報技術を用いた観察法による調査がより適切であることが明らかになった。 平成27年度には,利用者の図書館内における行動を記録するために,各種の位置特定技術に関する文献を収集し,また位置情報を図書館内で収集した経験のある専門家からアドバイスを得て,複数の機材を候補として挙げた。このうちいくつかについて,図書館における機材の設置と電波の受信状況について実験を行い,実施予定の調査で用いる機材として,ビーコンとラズベリーパイ(小型PC)を用いることを決定した。 平成28年度には,調査協力図書館において,専門家の協力のもと,ラズベリーパイやルータを設置し,ビーコンを携帯して館内を移動した際に,アイビーコンから発される電波をラズベリーパイが受信し,外部サーバに蓄積するためのシステムを構築した。館内で取得した位置情報を外部サーバに蓄積しアクセスすることが可能になった。 平成29年度には,当初,調査に技術面で協力してもらうことになっていた専門家が,途中で協力してもらえなくなったために,システム構築に関して業者に依頼してデータ蓄積の方法を構築しなおすことになった。そのため,再度の実験を行う必要が発生した。実験を経てビーコンから発されるデータの取得が再度可能になり,1月~2月に図書館利用者を対象にした本調査を実施した。
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