研究課題/領域番号 |
26330370
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
汐崎 順子 慶應義塾大学, 文学部, 講師 (50449021)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 読書 / 子ども / 文庫 |
研究実績の概要 |
1.ムーシカ文庫(児童文学者いぬいとみこが1965年から1988年まで練馬区で主宰した文庫)の記録の内容確認と整理,入力等:まず入手した資料の個々の資料の仕分け,蔵書記録の入力を終了した。子どもの読書記録については,入力内容と手順を定めた仕様書を作成し,全体の約4割にあたる25,000件のデータ入力を業者に委託した(3月納品)。なおこの読書記録から『現代日本子ども読書史図鑑』に掲載する「各時代における子どもの読書の様子」のための適当な事例を年代別に抽出,内容の検証を行っている。文庫の活動ノートの整理,確認,文献調査等よりムーシカ文庫の活動を時系列に追う作業も行った。 2.ムーシカ文庫の後継文庫への訪問調査:まーしこ・むーしか文庫(栃木県益子町)に訪問調査を実施し,ムーシカ文庫から継承した蔵書記録,子どもの現在の読書記録棟の情報提供を依頼した。 3.ムーシカ文庫以外の類似記録,文庫活動の調査:クローバー子供図書館(福島郡山市),白河柿の木文庫(福島県白河市),ちいさいおうち(岩手県陸前高田市)等を訪問し,現代の文庫活動,子どもの読書の状況について調査した。 ムーシカ文庫の子どもの読書記録の電子化は、子どもの読書を解明するデータベース作成を目的としている。ここから文庫を利用した子どもの読書の実態,各成長段階に応じた読書能力,読書興味の変化の様子を実証的に明らかにすることができる。さらにムーシカ文庫の後継文庫,まーしこ・むーしか文庫の読書記録を入力する予定である。最終的には全体を統合し,様々な観点からの分析と検証を行う貴重な情報となるデータベースを構築する。現在活動している文庫,まーしこ・むーしか文庫への訪問調査,資料調査から得た資料および情報と,ムーシカ文庫の情報の比較,総合的な検証は,1960年代半ばから現在に至る「子どもの読書」の実態の解明につながる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
入手済みのムーシカ文庫の資料把握と整理,蔵書記録の入力は26年度に完了した。子どもの読書記録の入力については25,000件を入力委託した。3月に納品されたデータについては作業補助者が現在内容チェックを行っている。残りの約40,000件を27年度に依頼する予定だが,コード指示等,委託の準備は既に終了している。平成26年度の前半に行った文献調査,記録調査からは発展的な視点,新たな情報を得て,本研究に重要と考える文庫への訪問調査を追加で実施した。このうち陸前高田市における文庫活動については,調査内容の一部を発表した。 ムーシカ文庫と同様,子どもの読書記録を保存するクローバー子供図書館への訪問調査を行った結果,量的および内容的な問題から,今回は本研究の柱とすることが困難であると判断した。しかしムーシカ文庫から蔵書を受け継いで文庫活動を始めたまーしこ・むーしか文庫から,現在の読書記録を含む各種資料提供について協力を得られることになった。こちらの記録については26年度中にサンプルを一部入手し,内容の確認と作業手順を検討中である。今後はこの二つの文庫の記録を統合,検証して,現在に至る子どもの読書活動の様子をより一貫性,実証性を持たせた形で研究成果として示すことを目指す。 文献調査,背景調査(戦後の各時代の児童書出版情報,読書調査など)については現在までの研究者の研究実績があり,現在も継続して調査研究を行っている。研究成果の一部として『日本子ども読書史図鑑』(柊風舎,2017秋刊行予定)に掲載する「各時代における子どもの読書の様子」の執筆準備も並行して進めている。
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今後の研究の推進方策 |
1.読書記録の入力および分析方法の検討(27年度):前半期にムーシカ文庫の読書記録の入力を終了し,続けてまーしこ・むーしか文庫のデータ入力を進める。閉庫したムーシカ文庫とは異なりまーしこ・むーしか文庫は現在活動中の文庫であるため,基本的に作業補助者と現地での記録調査を予定している。連携研究者の石田栄美氏に協力を依頼して,全体的なデータベ-スの構築,データ分析の方法や作業内容等を検討する。27年度は試験的に分析を行い,検討課題を洗い出して最終年度の成果の方向性を考える。 2. 研究成果の発表(27年度):ム-シカ文庫の記録の分析,検証結果を中心に学会で中間発表を行う(秋季を予定)。『現代日本子ども読書史図鑑』に掲載する「各時代における子どもの読書の様子」のために抽出した特徴的な事例について検証,執筆準備をすすめる(2017年秋刊行予定)。 3. 全体的な読書記録のデータベース構築(28年度前半期):研究最終年度の前半期中にム-シカ文庫,まーしこ・むーしか文庫の読書記録を統合し,読書記録のデータベ-スを構築する。引き続き連携研究者,石田栄美氏に協力を依頼する。 4. 総合的な検証と考察(28年度後半期):データベースの総合的な分析,検証から,研究目的である,成長段階に応じた読書能力と読書興味の変化および,戦後の各時代における日本の子どもの読書の実態を明らかにする。また本研究で整備・入力する子どもの読書記録のデータベースは,さらに発展的,継続的研究が可能な情報資源であることは明らかである。従って,将来の研究課題と研究意義を検討して示す。 5. 研究成果の発表(平成29年3月):成果発表会を開き,本研究の一連の成果,および将来的な研究課題を発表する。成果報告書は紙媒体およびウェブ上で公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
主として業者に委託する子どもの読書記録のデータ入力数が予定件数より少なくなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
26年度未入力分を27年度に合算し,業者にデータ入力を委託する。
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