研究課題/領域番号 |
26330371
|
研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
荻原 幸子 専修大学, 文学部, 教授 (60242137)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 公共図書館 / 熟議民主主義 / 住民参加 |
研究実績の概要 |
本研究は、地域住民の意思を反映した民主的な公共図書館行政を実現するための、住民のあり方を追究することを目的とする。具体的には、まず熟議民主主義論(政治学)に基づく「住民間の討議」を規範モデルとして設定し、実態把握のための観点と分析の枠組みを導出する。次に、図書館行政に住民意思を反映するために組織された「図書館づくり住民団体」と「図書館協議会」における「住民間の討議」の現状にもとづき、住民を主眼とする図書館行政のガバナンス論を展開する。 平成26年度は、熟議民主主義論に関する文献調査にもとづき、討議の実態を把握するための観点として「参加者」「(参加者の)専門知識の獲得」「討議の過程」「合意の状態」「アウトリーチ活動」「意思決定主体への伝達」を設定し、これらを相互に関連づけた分析の枠組みを提示した。さらに、過去3年以内に図書館長の諮問に対する答申文書等により、その意思を表明した図書館協議会を調査対象として選定し、部分的に図書館長、協議会委員に対するインタビュー調査を実施した。また、図書館づくり住民団体について、図書館関連文献(図書・雑誌)に表された1980年代以降の活動に関する記述内容から、討議の状況を整理した。 これらの成果は、実態調査を主軸とする平成27年度以降の研究の基盤となるものである。分析の枠組みと、図書館づくり住民団体に関する文献調査の結果は、学会での口頭発表とともに、論文として投稿予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究実施計画通り、熟議民主主義論に関する文献調査により、本研究の枠組みを確定することができた。また、図書館協議会を対象とする実態調査を部分的に実施したことにより、調査方法や手順の再検討が必要であることなど、調査計画に関する具体的な改善点を見出せた。図書館づくり住民団体については、所定の成果を公表できる段階に至っている。
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度に得られた成果について、研究大会での口頭発表、学会誌への原著論文の投稿を行う。また、複数の図書館づくり住民団体と図書館協議会を対象として、関係者へのインタビュー調査と資料収集を実施する。調査対象は、過去3年以内に文書(答申、陳情・請願など)による意思を表明した協議会・団体であることに加えて、新館建設や既設施設の改修などの「図書館設置・建設」、もしくは、指定管理者制度の導入などの行政改革による「運営形態」をテーマとすることも要件とする。調査によって得られた内容を分析の枠組みに基づいて整理することにより、住民間の討議の実態を明らかにする。その上で、熟議民主主義論における討議のあり方を参照しながら、図書館行政のガバナンスにおける住民のあり方について考察する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
資料整理、及び、専門知識の提供のための「人件費・謝金」が残額となった。 当初予定していた資料整理等の作業は、研究代表者による実施が可能であったために使用しなかった。また、謝金については、先方から固辞されたことにより支出しなかった。
|
次年度使用額の使用計画 |
残額は主に、次年度の実態調査のための旅費や出張先での交通費、テープ起こしの費用、成果発表のための翻訳・校閲費等に充てる予定である。適宜、インタビュー調査の対象者への謝金としても支出する。
|