研究課題/領域番号 |
26330372
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
野口 武悟 専修大学, 文学部, 教授 (80439520)
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研究分担者 |
植村 八潮 専修大学, 文学部, 教授 (50646304)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 電子書籍 / アクセシビリティ / 情報資源 / 出版流通 / 図書館 / 障害者 / 情報保障 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、アクセシブルな電子書籍の製作・提供をめぐる海外の動向を把握したうえで、日本国内においてアクセシブルな電子書籍を安定的に製作・提供し得るプロセスをモデル化することである。 当初の研究計画通り、本研究の2年目にあたる平成27年度においては、アクセシブルな電子書籍の製作・提供プロセスを検討した。 アクセシブルな電子書籍の普及が進まない大きな要因として指摘されるのが、製作のハードルの高さ(工程、コスト、時間など)である。従前よりも容易に製作できる方法が見出され、これらハードルを下げることができれば、アクセシブルな電子書籍のタイトル数の拡大と普及に資する可能性は高い。そこで、入手が容易な既存の製作ツール3つ(「InDesign」(アドビシステムズ株式会社)、「PLEXTALKProducer」(シナノケンシ株式会社)、「DaisyRings」(株式会社東芝))を事例として用い、アクセシブルな電子書籍を実際に製作し、実証的に検討を進めた。 その結果、出版界に広く普及しているDTPソフトである「InDesign」を用いて音声読み上げ対応のアクセシブルな電子書籍を製作することは可能であるが、ある程度のノウハウが必要であり、容易な製作手段とは言い難いことがわかった。一方で、DAISYフォーマットの電子書籍製作のための専用ツールである「PLEXTALK Producer」や「DaisyRings」を用いれば、比較的容易に一定の品質を担保したアクセシブルな電子書籍を製作することはできたものの、DAISYフォーマットの電子書籍の市場流通がない日本においては一般流通と普及などが課題となることが分かった。 本研究の最終年度にあたる平成28年度では、これまでの成果をふまえつつ、アクセシブルな電子書籍を安定的に製作・提供するためのプロセスのモデル化とマニュアル作成に取り組む。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度においては、当初の研究計画に沿って、実際にアクセシブルな電子書籍の製作を行い、そのプロセスを実証的に検討することができた。しかし、視覚障がい者に依頼して製作した電子書籍を実際に利用してもらう実験については当初の予定よりも少ない3名での実験にとどまった。したがって、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終年度となる平成28年度においては、これまでの2年間の研究成果をふまえて、アクセシブルな電子書籍を安定的に製作・提供するためのプロセスのモデル化と、それを実現するために取り組むべきことを出版、図書館、利用者それぞれの別に整理してマニュアル化する。これらの成果を盛り込んだ報告書を電子書籍として製作、発表するとともに、公開シンポジウムの開催やウェブサイトを通して広く社会に発信・還元していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究に必要な消耗品の購入が予定よりも少なかったため、残金(次年度使用額)が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度に計画している公開シンポジウムにかかる費用として充当する予定である。
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