研究課題/領域番号 |
26330374
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研究機関 | 神戸女子大学 |
研究代表者 |
久野 和子 神戸女子大学, 文学部, 准教授 (80635524)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 場としての図書館 / 国際情報交換 / 第3の場 |
研究実績の概要 |
現在の高度情報化社会、生涯学習社会において、図書館の物理的な場所としての価値が広く注目されている。しかし、「場としての図書館」研究が、欧米を中心に新しい学際的図書館研究になりつつあることは、まだ日本ではあまり認識されていない。したがって、本研究は、26年度第一段階として、「場としての図書館」研究の新規性と意義について紹介するために、その研究・実践における歴史と現状の全体像を一次情報および学術文献、そして現地調査によって把握、分析することを目指した。 まず、歴史的な研究業績としては、共著『図書館トリニティの時代から揺らぎ・展開の時代へ』を刊行できた。この本は研究協力者の川崎が主導し編纂した研究論文集であり、図書館の基本的価値の歴史的変容という壮大な視点のもと、過去から現在に至る各フィールドにおいて、具体的に各専門研究者(川崎、久野、吉田、安里ほか)が考察した研究書である。本書の中において、久野と川崎は「場としての図書館」研究を歴史的に位置づけ、その意義を明らかにし、研究基盤となる歴史的考察に大きな成果をあげることができた。 また、研究の現状紹介については、久野が論文「新しい批判的図書館研究としての“場としての図書館”(“Library as Place”)研究-その方法論を中心にした考察」において、研究の学際性、新規性、意義について詳細に論じた。また、現在欧米の図書館界で注目されている場の概念についても、久野が論文「第3の場としての図書館」において紹介、解説した。久野のシンポジウム発表の報告も雑誌に掲載され、図書館界に「場としての図書館」研究の存在を広く知らしめることができた。さらに夏には国際フォーラムでも発表した。また、研究協力者の吉田は北欧の公共図書館が対話とエンパワーメントを醸成する場として効果的に機能していることを論文や講演などで紹介した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究目的を達成するために精力的に研究をおこない、その研究成果を論文、単行書、講演、口頭発表などで発信した。当初の研究計画の予定よりも、質、量、発表形式ともにすぐれた研究実績をあげることができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、論文や研究書などでの研究成果の発信が主であったが、今後は、デジタル、インターネット形式でも研究成果を積極的に発信し、研究成果を広く一般社会に還元していきたい。現地調査についても、まとめて論文や現地報告を書く前に、HPやSNSなどで最新の情報を逐次、広く平易に社会に向けて発信し、研究成果を社会に効果的に還元していきたい。 今後はさらに海外の先進的なサービスをおこなっている図書館を視察するとともに、研究者とも情報交換をして、研究交流を深め、「場としての図書館」研究に参画していきたい。日本においても同様に研究をすすめる。また、理論的にも「第3の場」だけでなく、他にも図書館に適用できる「場」の概念を検討していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
特に海外旅費が予定より少額となった主な理由としては、滞在期間が2週間以下と短かったためである。大学の教育実習の巡回が多数あることを、赴任初年度で把握しきれておらず、巡回をうまくやり繰りできなかったため、海外出張を長く取得することができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、教育実習について時期と実習先をできるだけ早期に把握し、しっかり計画を組み、海外出張計画を立てたい。
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