コンピュータ・ウィルスに感染し、その事を認知した場合でも、人は対策を取るケースが多くない。その要因を 明らかにし、情報セキュリティ対策を促す研究を、説得心理学を基礎とする質問紙と実験により進めている。 ボットウィルスを例にとり、説得心理学を用いてウィルス感染前の状態にPC を復帰させる方法に主眼をおいた対策の研究が行われ ている。このウィルス対策実行の要因は、その人の価値観や習慣等によって異なり、対策法が国民性に異存する可能性がある。例えば ウィルス感染したコンピュータのユーザーに働きかける活動について、日本ではACTIVE が活動を行い、国内ボットウィルス感染率が 削減されたという効果が出ている。一方、オーストラリアではAISI が同様の活動を行っているが、この活動に対し懐疑的な意見が多 数見られる。そこで、日本の「大学生とオーストラリアの大学生を対象に、ウィルス対策実行の要因を調査・比較し、ウィルス対策に 関する国民性による違いについて考察した。その結果、日本人は、効果性認知を刺激すると、比較的容易に、対策実行意思を刺激でき る可能性が高い事が分かった。一方、オーストラリアの学生は、感染を通知するメッセージそのもの、および、その情報への懐疑心が 強く、説得行為を刺激する為には、日本人以上に難しいことが分かった。 その結果を検証するために、教育用ビデオを作成し、教育効果の測定を実施したところ、想定した結果通りの結論を得た。 また、人と人との信頼関係の研究が、本プロジェクトには重要であり、地震災害時のボランティア活動を対象に、ボランティア活動を継続して実施する要因の分析、および、その要因を刺激する方法についての検討を、熊本地震現場で活躍中のボランティア団体と共同で開始し、活動データを蓄積するためのデータベースを試作し、さらに、ボランティアへのアンケート調査も実施した。
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