研究課題/領域番号 |
26330387
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研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
山本 仁志 立正大学, 経営学部, 教授 (70328574)
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研究分担者 |
岡田 勇 創価大学, 経営学部, 准教授 (60323888)
諏訪 博彦 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 助教 (70447580)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 沈黙の螺旋理論 / エージェントシミュレーション / デマの拡散 |
研究実績の概要 |
本研究は「ユーザの心理的特性に基づくSNSのコミュニケーション推移の動態メカニズムの記述」を目的のひとつとして掲げている。具体的には、SNS上のコミュニケーションによって世論形成がどのような過程を経るのかを理解する。 このことは、地域の合意形成がSNSが存在することでどのような影響を受け、どのような経緯をたどるのかを理解する上で非常に重要な課題である。我々は、世論形成に関する理論モデルである「沈黙の螺旋理論」がSNS上で発生し得るのかを質問紙調査・行動データのマイニングを統合することで実施した。その結果、コミュニケーション相手を自由に選択できるSNSにおいては、社会において多数派であるという認識に加えて、フォロー関係にある人たちの同質性が自身の意見発信を促していることが分かった。個の知見は国内学術雑誌ならびに国際学術雑誌に刊行された。 また災害時にはSNSがデマ等のネガティブな情報の拡散をもたらしてしまうという懸念も存在する。デマの拡散の過程とメカニズムを理解することでSNSの健全な運営が可能となる。デマの拡散に関するシミュレーションモデルを構築し、国際会議・国内会議で6件の発表をおこなった。 更には、シミュレータ開発を進めた。災害時には、例え利害の対立する個人間であっても協力関係を構築することが重要である。そのためには、競争関係にある個人間で協力が達成される条件を探る「公共財ゲーム」モデルを用いた検討が有効となる。メタ・サンクションまで考慮した複雑な公共財ゲームを再現し、協力の達成条件を探るためのシミュレータを開発した。個の知見は国際学術雑誌に掲載予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度に予定していたSNSユーザ調査ならびにログ解析に関しては、SNSユーザの質問紙調査と行動データのログ解析をおこない、学術論文を公刊している(小川 祐樹, 山本 仁志, & 宮田 加久子. (2014). doi:10.1527/tjsai.29.483他)。また、シミュレーションについても本来は27年度に実施する予定であったが、災害時のデマ拡散に関してエージェントシミュレーションを実施した(Ikeda et.al.2014他)。最終年度に予定しているシミュレータ開発についても、プロトタイプの検討として公共財ゲームを題材とした研究においてシミュレータを開発した(Okada et.al.2015(印刷中))。 これらのことを鑑みると、研究計画はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度はSNSにおけるコミュニケーションダイナミクスの分析、シミュレーションモデルの構築が主たる目的となる。 コミュニケーションダイナミクスの分析については、SNSユーザ調査に関してパネル分析でユーザの追跡をおこなう。この結果とSNS上の行動ログを統合し、SNS上のコミュニケーションがユーザの態度、意見等にどのような影響を与えたのかを明らかにし、SNSのコミュニケーション並びに世論形成のダイナミクスを明らかにする。 シミュレーションモデルの構築については、昨年度に引き続き、災害時の情報拡散モデルを精緻化し、そこにSNSの特徴を取り込んだモデルを構築する。
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