最終年度となる平成29年度は、過年度までに実施したフィールド調査の結果をとりまとめ、国際学会での発表、国際学術誌における論文発表等、成果発表を中心に研究活動を行った。 メディア接触のありかたが日本食受容にどのような影響を与えているのか、世界各地で起こっているその動態を捉えるという本研究の目的である。その目的に照らし、過年度までの世界各地でのフィールド調査に加え、日本国内での日本食イメージの形成とメディアの相関についても着目し、新聞やテレビといったマスメディアにおける日本食記事の増減やそれらの記事にとりあげられた語彙の変容、記事の内容分類とその変化についても調査を行ない、海外における日本食イメージとの違いについても考察を行った。 また、世界的な食のトレンドに大きな影響力を持ち、日本食受容についても大きな役割を話したと考えられるフランス人の高級レストランの料理人の日本食受容について、フランスにおける日本食人気の黎明期であった2000年代前半に実施された、フランス人の高級レストランの料理人を対象に実施した聞き取りの記録を用い、彼らの語りの分析を行った。 これらの調査の結果をとりまとめ、日本食受容が現地の食文化にとってどのような意味づけをもち進行しているのかを社会背景の変化との相関で捉えた食文化という視点での研究発表と海外で進む日本食受容が日本においてどのように受け止められ、メディアを通して伝えられ、そのことが日本における日本食受容にどのような影響をあたえているのかということを考察したメディアコミュニケーションという視角からの研究発表を、それぞれフードスタディーズ、家政学の学会と人文社会学の学会で行い、それぞれ原著論文として発表した。できるだけ学際的に発表の場を求め、研究成果を公表することを心がけた。
|