平成28年度は、グラフ構造に基づくライフログアプリケーションを対象として継続研究を行い、その学術的な拡張および精度向上を行った。具体的には、形式概念分析による対象スポットの抽象度の取り扱いを可能とし、対象ユーザの嗜好にあわせた情報粒度(抽象度)での情報推薦を可能にした。 本研究では、研究期間全体を通して、グラフ構造を持つ実応用をターゲットとしており、平成26年度は、オンライン学習百科事典を対象とし、平成27年および28年度は、諸事情で当初の研究開発ターゲットとしていた学習百科事典の利用が困難となったため、データの構造は本質的に維持したままた、ターゲットとなるアプリケーションを、iPhone用デバイス上で稼働するライフログアプリケーションに切り替えた。当該ライフログアプリケーションにおいては、学術的なポイントが3点挙げられる。具体的には、1. ユーザの移動履歴を状態遷移行列として獲得することで高精度な情報推薦を実現できること、2. 推薦情報の中核情報としてテキスト情報ではなく、画像情報に基づくBag of Visual Wordsを利用したこと、また、さらに画像情報とテキスト情報の橋梁となる写像を構成することで、当該ユーザの履歴画像のみから嗜好の手がかりとなるテキストを抽出可能としたこと、3. 形式概念分析を導入することで、当該ユーザの履歴から、嗜好の階層構造を構築し、それにあわせた抽象度での推薦が可能になったこと、である。 構築したライフログアプリケーションを用いた主観評価実験を行い、10名の被験者に対して実行した結果、提案手法の有効性を確認することがきた。
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