研究実績の概要 |
本研究課題では, LMSを活用した持続型情報倫理教育のためのeラーニングコンテンツ/プラットフォームの開発を推進するため, 次の項目について研究開発を実施しており, 今年度の実績は下記の通りである. (1) 標準化: 既存のコンテンツを時代の変化に応じ改訂することを通して, またプラットフォームであるLMSについて将来を見据えた選択を行い, 情報倫理教育の標準化指針を提供する. 今年度は, コンテンツ形式について検討を行い, LMSによってその対応が不完全であるSCORM 2004からより汎用性の高いSCORM 1.2への変更を行った. また,受講者の意見を入力できるWebフォームの運用を行った. LMSについては多言語化の充実と学認(学術認証フェデレーション)への対応が可能であることから引き続きMoodleを採用した. (2) 多言語化: 標準化された教育内容をeラーニング化し, 日本語だけでなく英語, 中国語, 韓国語でも提供することを通じて, その効果を検証する. またLMSの多言語化に積極的に参画する. 今年度は, 昨年度に引き続き, Flashで構成されているコンテンツのHTML5化を進め, 英語, 中国語, 韓国語版を公開し, これで全てのコンテンツがHTML5となった. 加えて, LMSを独自にカスタマイズしている部分に対する翻訳文字列の提供と, メンテナンス告知など運用レベルで必要となる多言語化についても可能な限り行ってきた. (3) 持続性の追求: コンテンツとLMSを持続可能な形で刷新・運用する手法の確立を目指す. コンテンツを実運用している学認連携Moodleでは, 受講記録の取得に大きなシステム負荷がかかることが報告されていたため, 受講の徹底と受講記録の取得時のシステム負荷軽減のため, MoodleのConditional Activitiesを活用したコンテンツの分離を行った. これにより, 利用者が全てのコンテンツを受講していることが保証され, 利用機関が受講記録を取得しやすくなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に進展しているとする理由は以下の通りである. (1) 標準化という観点から, SCORM 2004で構成されているコンテンツをより汎用性の高いSCORM 1.2化を完了したことより, コンテンツの可用性が向上した. (2) 多言語化については, 日本語, 英語, 中国語, 韓国語すべてのHTML5化を完成させたことにより, 多言語コンテンツをより多様な環境に対応させることができ, 日本特有の文化について留学生が理解できるようなコンテンツを提供できた. (3) 持続性を追求した結果, LMSの大規模運用に関するノウハウを蓄積することができた. MoodleのConditional Activities機能を活用したこの取り組みは大学ICT推進協議会2015年度年次大会において優秀論文賞を受賞した.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題が目指す,LMSを活用した持続型情報倫理教育のためのeラーニングコンテンツ/プラットフォームの開発を推進するため, 今後は以下の方針で研究を推進する. (1) 標準化: 「高等教育機関の情報セキュリティ対策のためのサンプル規程集」2016年版の改訂に追従する. (2) 多言語化: 現状のコンテンツは日本語版からの翻訳となっているが, 各言語, すなわち文化の違いにより必要な内容を追加することを検討する. (3) 持続性の追求: 情報倫理教育は受講者の知識が一様でないことから, 「プレテスト」を導入し, その成績に応じ受講が必要なセクションを動的に提示する機能の実現を目指す.
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