研究課題/領域番号 |
26330399
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
豊田 充崇 和歌山大学, 教育学部, 教授 (60346327)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 情報モラル / ネットワークコミュニケーション / SNS |
研究実績の概要 |
平成26,27年度を経て学校教育現場の実態を調査し、児童生徒らのネット利用状況やネットワークコミュニケーションに関する状況を把握することができた。これらは、各種論文や報告書に掲載したが、年度を経るごとに児童生徒らのネット利用状況やスマートフォンの普及が見られた。しかしながら、その一方で、ネットワークコミュニケーションの能力やセキュリティに関する意識は依然として低く、情報機器の普及に情報モラル教育が追いついていない現状が明らかになったといえる。 当研究の最終目的は、危険性周知的な講義形式によってなされる「情報モラル指導」をより実践的・体験的な学習活動とするために、仮想のSNSを構築して、それによってネットワークコミュニケーションやセキュリティを学ぶことにある。しかしながら、学校教育現場では、一部を除いてタブレット端末の導入は進んでおらず、学校教育内のPCは新規プログラムのインストールや学校外サイトに自由に接続できないなど、かなり制限された環境にある。 そこで、まずは想定した情報モラル指導を、アナログ版(紙媒体主体)で実施したり、もしくはウェブサイトに一部の機能を盛り込んだSNSを利用して、モデル授業の実践的な効果検証を進めてきた。当事者意識を高めるために、ビジュアライズされた画面によって仮想体験をおこなう各種教材も開発済みである。これらは小学校4年生から中学3年生までを想定しており、ここで開発した授業モデルは既に他県の研修センターが採用するなどの実績をあげている。 これらのプレ検証を通した結果、学校教育において短時間で且つ体験的にネットワークコミュニケーションやセキュリティの重要性を学ぶSNSの仕様設計を見出すことができたといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
教育現場の実態調査については、当初の計画以上の成果を挙げており、その調査対象は小・中・高校から特別支援学校までの他校種に及び総数も3,000人以上となっており、統計学的にも意味のある結果を導くことができている。また、単なる利用実態調査ではなくて、意識調査や感覚調査、依存レベルまで明らかになってきている。 これらの調査結果を経て、教育現場との共同研究の中で、必要とされている情報モラル指導内容を精査し、当初からの最終目的である「教育用SNSのシステム設計」を固めることができた。また、このシステム開発以前に、同趣旨の教材をアナログ媒体で作成しており、これらは既に多くの教育現場で活用されており、大阪市の教育センターなどでは正式に研修内容にも盛り込まれているほどである。ただ、システムの稼働については、外部委託が遅れたこともあり、その検証については当初よりも遅れがあるものの、これは申請当時(25年度)よりも、児童生徒らのSNS利用状況が大きく変容しており、更なるシステム設計やプラットフォームの変更を余儀なくされているからであり、当科研の研究終了後も、色褪せることなく教育現場で活用し教育効果をもたらすものとするための仕様変更を重ねた結果であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
科研採択からの2年間、多くの教育現場を調査してきたが、学校教育現場のネットワーク環境や情報モラル指導体制はほとんど変化がないといえる。一方で、家庭環境におけるネット利用や児童生徒らを取り巻くスマートフォンの普及は爆発的に進んでいる。それらのネット利用の普及と低年齢化によって生じるトラブルに学校が対応できていないことは確かである。 それらのトラブルを把握するにつれて、「事前指導・予防的指導」によって防げた事例も多いことがうかがえた。しかしながら、全校集会の場でネットの危険性を講義するだけでは、実感が沸かないことも確かであり、当研究に掲げた仮想体験的な情報モラル指導や当事者意識をもたらす教材の利用は、体験的・共感的なものとなることは、これまでの実証授業が証明しているといえる。なお、これまで述べてきた各種教材については、既に研究代表者(豊田)の研究室サイトで一般に公開しており、日々、利用申請がなされている状況である。 平成28年度は最終年度にあたるため、上記の取り組みを継承しつつ、教育用SNSの開発の最終の詰めとその実証を進めていきたいと考えている。しかしながら、研究レベルにとどまるのではなく、やはり教育現場での利用によって、児童生徒への情報モラル指導における効果をあげたいと考えているため、その検証については、これまでの情報モラル指導との比較検討を密におこないたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
科研の最終目的である教育用SNSシステム開発委託費用について、平成27年度内での支払いができなかったためである。児童生徒らのスマホ・SNSの利用は日々増大しており、そのトラブル対応や必要とされている指導項目に変化が生じているため、当初想定したシステム開発について、再三の仕様変更を余儀なくされた。結果的には、教育現場のニーズを反映した仕様が確定しており、開発業者との話し合いの末、平成27年度末には最終段階まで到達できなかったため、次年度に移行することとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
現在、外部委託をおこなうIT企業との折衝をすすめており開発終了次第、教育現場での検証を経て最終の委託費用の支払いを確定する。これはできるだけ年度の早い段階で実施したいと考えている。少なくとも、教育現場での検証は夏休み開始前の7月までに終えなければらならないためである。
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備考 |
※当サイトは、これまでの研究成果の一端を提供するためのサイトです。
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