当初の予想通りに小・中学生のスマートフォン・SNS利用率は飛躍的に向上し、それに乗じて各種トラブル対応に苦慮する教育現場の実態が浮き彫りになってきている。当研究は大きく分けて3段階となる。まずは①教育現場の実態を実地調査すること(単なるアンケートではなくて、情報モラル授業を実施しながら児童生徒のSNS利用の感覚等を調査)、②実態に即した効果的な指導用教材を開発すること、そして、③仮想SNSを構築しネットワークコミュニケーションを実際におこないながら情報モラル指導のできるシステムを開発・実践することにあった。 ①では、利用アプリやトラブル事例まで踏み込んで調査し、対面コミュニケーションさえおぼつかない年齢の児童生徒らが、ネットワークコミュニケーションにおいて、その特性や感覚を理解せずに利用している実態や著作権・肖像権、セキュリティへの認識の甘さが浮き彫りとなった。児童生徒らの「送信したメッセージの相手への伝わり方」に関する「感覚の欠如」があり、一方で、「SNSグループにおけるメンバー内での”気遣い”=集団心理」によるストレスなども顕著に見出だせた。 ②は、当研究室サイトで順次公開しており、某県教育センターの情報モラル指導用教材として採用されるなど、利用実績があがりつつある。(明日から即実践できる情報モラル指導用教材サイト:http://www.wakayama-u.ac.jp/~toyoda/mrl/) ③においては、単発授業の導入部分で体験的活動に用いることを前提とし、機能を絞り込み、できるだけメジャーなSNSの操作感に近いものとして開発した。匿名性を維持したり、指導教員から悪意あるメッセージを送信して児童生徒らの反応を試す機能等を盛り込んだ。マルチプラットフォームであらゆる端末から活用できるシステムとなったため、今後は②の教材とともに教育現場に広く提供していきたい。
|