本研究は,今回の研究の目的は,Flashによるオンライン分子グラフィックス表示システムの開発と,それを中心としたクラウド型の化学教育支援システムの構築を行う.これらによって,場所や時間,教員の情報スキル,学校の設備等に捉われない,体験型の化学教育の促進を目指すものである. 平成26年にFlashによる分子グラフィックス表示システムの開発を行い,パソコン上での表示と,サーバ上で分子グラフィックスコンテンツを動的生成するシステムの開発をおこなった.平成27年度は,生徒向けのインターフェースとして,スマートフォンやタブレットPCに対応させるための仮想現実感(AR)アプリケーションの開発を行った. 平成28年度は,前年度までに開発したFlashアプリケーションを,Webアプリケーションとして移植を行った.ここ数年来,スマートフォンのOSのシェアの殆どを占めるAndroidとiOSが,Flashの非対応化を進めてきた.そのため,当初の予定にはなかったが,学生向けのAR分子グラフィックス表示システムを,Webアプリケーションとして開発した.開発においては,多くのOSに対応すべく,JavaScriptの標準技術を用いた.ARのマーカーの読み取りにおいては,カメラ画像の取得のためにリアルタイムコミュニケーションを可能とするAPIである,WebRTCを用いた.読み込んだマーカーの認識にはOpenCV,分子グラフィックスの3次元表示においては,JavaScript用の3次元CGのAPIであるWebGLを用い,開発を行った.これにより,スマートフォンやタブレットPCのOSに依存することなく,Webブラウザ上での分子グラフィックスのAR表示を可能とした.そして,開発したアプリケーションを用い,大学生を対象にユーザーテストを実施した.
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