前年度までに作成した、教育用アニメーション(萌え要素+技術擬人化要素)を用いて、教育効果の実測を行った。実測に際しては、翔泳社、書泉ブックタワー、KADOKAWAなど、サブカルチャーに強いメディア企業の協力を仰ぎ、産学連携の形で当初予定より幅広い被験者に対して実施することができた。 事前に立てた仮説の通り、萌え要素や擬人化要素を用いたアニメーション教材は、初学者に対して訴求効果があり、特に導入教育時に有効であることが確認できた。また、サブカルチャーに親和性の高い利用者層(いわゆるオタク)にのみ効果があるのでは、という事前の懸念については、それを覆し、オタクと一般層の間に有意な差は見られなかった。 一方で、勉強に慣れた層、学力上位層は、教育用アニメーションに対して忌避感があった。その最大の理由は、単に教育効果を考えたとき、萌えや擬人化が含まれている教材、特に動画教材は冗長であり、コンパクトに学習すべき項目だけがまとめられた従来型の文字教材と比べると、同じ内容を学習するのに多くの時間を消費してしまう点に求められる。 したがって、すべての教材を萌え化、擬人化するような利用方法は乱暴であり、厳に慎むべきであるが、本来この研究で想定していた勉強が苦手な層に対しては、有意に望ましい結果を得ることができた。本研究は、幸いにも民間企業の協力を得ることができ、事前計画以上に展開することができた。趣旨に賛同した翔泳社が、萌え要素、擬人化要素を適用した技術教育書籍を刊行、それをKADOKAWAが漫画化するといった展開である。まだ萌芽的な段階だが、産学連携の芽を大事に育てていきたい。また、いわゆる聖地巡礼を推進している団体からも注目を集め、岐阜県などと聖地巡礼についての連携研究体制を構築することができた。別分野への成果転用の形になるが、この方面にも研究成果の適用を拡大し、社会に還元していきたい。
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