研究課題/領域番号 |
26330413
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研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
福井 哲夫 武庫川女子大学, 生活環境学部, 教授 (70218890)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 数式入力インタフェース / 知的学習支援システム / 数学eラーニング / 機械学習 / 理数系IT活用教育 / 自然言語処理 / 知的UI |
研究実績の概要 |
平成27年4月~6月:平成26年度の後半は提案している数式入力インタフェースを数学eラーニングシステムに実装し、被験者実験によって操作性のパフォーマンス評価および行列入力の改善を行い、良好な結果を得た.それら2件の成果をまとめた論文は平成27年6月情報処理学会の論文誌に掲載された. 平成27年7月~9月:当該年度の初め頃には数式入力のインテリジェント化のためのデータ構造および機械学習アルゴリズムの設計が完成し,6月には予測アルゴリズムの提案を第6回ARG Webインテリジェンスとインタラクション研究会にて発表した.さらに,提案アルゴリズムを実装したプロトタイプシステムを試作し,予測の正答率評価を行ったところ90%近い精度を得た.この結果は,国際会議ACA2016にて発表した.さらに,プロトタイプの数式入力インタフェースを数学eラーニングシステムSTACKに組み入れることに成功した.この成果は9月の京都大学数理解析研究所研究集会「数学ソフトウェアとその効果的教育利用に関する研究」にて発表し,その論文は平成27年12月発表の講究録に掲載された. 平成27年10月~12月:機械学習による予測アルゴリズムの安定化をさらに高め,その成果は11月に国際会議MACIS2016にて研究協力者の白井詩沙香との共同研究として発表した.この研究をまとめた論文はLINCS 9582 proceedings (Springer)に投稿中である.これにより数式入力インテリジェント化の基礎は完成した. 平成28年1月~3月:これまでの一連の取り組みを日本数式処理学会の合同分科会にてこれまでの成果をMathTOUCHプロジェクトとして報告した.また,2月には11人の学生被験者に協力を仰ぎ,数式入力インテリジェント化に必要な訓練データの入力テストを実施してもらった.これにより被験者実験への準備が整った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は,大きく3つの課題に取り組んできた.一つは,初年度から進めてきた数式入力方式のインテリジェント化,その基礎となる機械学習技術を応用した数式予測アルゴリズムの完成度を高める研究である.これらは一定の成果が得られ,予測精度がベスト1候補で約75~85%,ベスト10まで含めると約96.2%と,十分実用レベルに達した. 二つ目の課題は,インテリジェント化された数式入力UIを実装した数式文書エディタを完成させることであり,現在JavaScriptによるWebアプリケーション化にほぼ成功している. 三つ目は,数学eラーニングに本提案数式入力UIを組み入れることであり,これもプロトタイプとしては数式自動採点システムSTACKに実装することに成功している. 残る課題は,それらの実装システムの完成度を高め,ユーザ実験を実施して有効性を評価することにある.これらは,平成28年度に遂行する.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度(最終年度)は,インテリジェント化に成功した数式入力ユーザインタフェースを数式エディタおよび数学eラーニングの解答入力ツールとしての観点から被験者テストを行い,提案方式の有用性を実証していく計画である.その後,それらの成果をWebアプリケーションサーバに構築し,広く利用してもらえるように公開していく. 平成28年度前半は,まず,評価のための被験者テストがスムースに行えるようにするために,根幹であるインテリジェント化された数式入力インタフェースの完成度を細部にも注意して高める作業に取り組む.具体的には,現在,高校数学Ⅰの範囲で扱う数式においては高い精度で予測し,効率向上につながることが示されているが,高校数学Ⅲの範囲まで対応できるように,機械学習による訓練実験を繰り返し,実用性を高めていく予定である.その後,8月までに被験者実験が行えるように数式エディタおよびインテリジェントUI実装数学eラーニングシステムを準備していく.この点に関しては,理論的・技術的困難性は無いと考える.8月~9月ごろ被験者テストを実施して,有用性評価につなげていきたい. 最後に,成果の公開については,既に公開サーバは導入済みであり,現時点までの公開可能なシステム部分については試験的に公開を始めている.成果が得られ次第,順調に公開サーバへアップロードしていけるものと期待している. ただし,数式入力インタフェースのインテリジェント化には新たな課題も見えてきている.その一つは予測計算時間の高速化である.複雑で長い数式を予測するためには異常に長い時間を要してしまう.それでも,本システムは対話的システムのおかげで,分割して処理することが可能で,実用上問題ない.しかし,最新の高度な機械学習アルゴリズムを取り入れて,より精度と計算高速化を高めるための研究は今後,魅力的なテーマとなり得ると思われる.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は,数式入力のインテリジェント化に関する完成度を高め,それを応用した数式エディタや数学eラーニングシステムへ実装するための研究に注力を注いできたため,被験者テストによる,優位性検証,実用性検証,有効性評価が積み残されている.その多くはほぼ予定通りではあるが,若干の被験者協力費や実験機材借り上げ費が未使用となった.
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次年度使用額の使用計画 |
この繰越金は平成28年度に被験者実験の準備が整い次第,被験者への謝礼として使用する予定である.したがって,研究計画の内容に特に変更は無い.
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