本研究の目的は,Second Life(SL)に代表されるインターネット上に存在する仮想三次元空間であるメタバースの訪問体験の質を向上させるための手法を確立させることである. 当該年度では最終年度であるため,これまでの課題を整理した結果,以下の研究内容を実施した. ○範囲制約付き行列分解法bounded-SVD biasの改善 bounded-SVD と呼ばれる新しい範囲制約付き行列分解の手法に対して拡張を図り,前年度に提案したbounded-SVD biasの性能を改善した.bounded-SVDとは予測評価値が範囲内になるように範囲制約をもつ行列分解法を指す.前年度の拡張(bounded-SVD bias)ではユーザのバイアス及びアイテムのバイアスが導入され,前記のデータセットを用いた評価実験において性能の向上が確認できた.しかし,bounded-SVD biasは過剰学習という現象が生じる傾向にあった.そのため,bounded-SVD biasに対して過剰学習を防ぐための正則化項を導入し,その有効性を同データセットにて確認した. ○プレイヤー分類のための不均衡データ問題の解消 メタバースにおいてプレイヤーの種類が偏っており,プレイヤーに対して情報推薦を行う際に,不均衡データ問題を解消する必要があった.ここで,SVM(サポートベクターマシン)に着目し,SVMによるプレイヤー分類における不均衡データ問題の解消を図った.既存手法では,SVMの入力空間においてボーダーに隣接した少数タイプのデータ間に人工的に新たな学習データを生成していたが,生成されたデータが,SVMで重要となる,特徴空間において分類境界に隣接することが保証されない.それに対して,特徴空間で少数タイプの新たな学習データを生成する手法を提案した.データ分類のいくつかのベンチマークデータを用いて提案手法の有効性を確認した.
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