研究課題/領域番号 |
26340004
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
布施 泰朗 京都工芸繊維大学, 環境科学センター, 助教 (90303932)
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研究分担者 |
山田 悦 京都工芸繊維大学, 環境科学センター, 教授 (30159214)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 琵琶湖 / 底質 / フミン酸 / フルボ酸 / Py-CG/MS / シミュレーション実験 |
研究実績の概要 |
琵琶湖底質は、2014年8月、10月、2015年2月に滋賀県琵琶湖環境科学研究センターの協力のもと、琵琶湖北湖St.17B水深90mで不攪乱採泥器を用いて採取した。また、バンドーン採水器を用いて水深85mで底質直上水も採取した。採取した底質コアは、堆積層別(0~1cm, 1~2cm, 2~4cm, 4~10cm, 10~20cm)に分取した。分取した試料は、間隙水と分離し、乾燥後、IHSS法に従い底質フミン酸と底質フルボ酸を抽出・精製した。2014年8月と10月に採取した底質コアを湖水環境シミュレーション実験の試料として用いた。 堆積層別フミン物質の物性をNMR、FTIR、3-DEEM、元素分析で底質フミン物質の特性を明らかにした。また、底質フミン酸をPy-GC/MSを用いて起源別に熱分解生成物生成量への熱分解温度の影響について植物プランクトン細胞、標準フミン物質と相対的に比較評価することにより、底質フミン酸の起源について迅速に評価する方法を開発することができた。 湖水環境シミュレーション実験に用いた試料は、不攪乱採泥器のサンプルシリンダー内に採取した底質コアを用い、シリンダーの上部の直上水をろ過した直上水に置き換えて調製した。窒素、酸素および二酸化炭素ガスを用いて直上水のDO値、pH値を自動制御し、化学成分の分析を継続して行った。その結果、金属元素の溶出等は、杉山らが行った結果とよい一致を示した。また、有機成分については、直上水中TOC値がシミュレーション期間中は有意な変化は見られなかったにもかかわらず、フルボ酸様蛍光物質濃度は大きく上昇した。これは琵琶湖北湖底層水で成層期にTOC値は変化せず、フルボ酸様蛍光強度が増加する傾向と一致していることから、本シミュレーション実験は湖水-底質間の有機・無機成分の物質循環を再現できていると考えられた。 これら開発した方法により、琵琶湖北湖水-底質間のフミン物質の生成分解過程などを含む物質循環を解析することが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. Py-GC/MSを用いた熱分解温度を変化させることによる熱分解生成物生成量への影響を評価する化学特性解析法を開発し、琵琶湖底質フミン酸に適用することができた。
2. 湖底環境シミュレーション実験による湖水・底質間における物質循環の評価方法についてそれぞれ開発することができた。
3.開発した方法を用いて琵琶湖北湖における湖水-底質間の物質循環を明らかにする準備を1年目に行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
1. 琵琶湖の循環期、成層期の底質中フミン酸及びフルボ酸の動態について開発したPy-GC/MS法および、化学成分分析により解析を行う。 2. 湖底環境シミュレーション実験では、低酸素化の影響と湖水・底質間における物質循環について複数の底質コアを同時に異なった条件でシミュレーション実験を行い、直上水中の溶存物質およびシミュレーション実験前後の底質コア中化学成分を比較検討することにより解析を行う。 3. 底質フミン酸、底質フルボ酸および琵琶湖北湖水中フルボ酸の関係ついてさらに明らかにするため藤嶽らの方法に準じて琵琶湖北湖水中フルボ酸を抽出・精製し、底質試料から得られたフミン物質の化学特性と比較検討する。
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