研究課題
本年度は中央日本に位置する白駒池・四尾連湖、九州地方の小田の池を対象に、1) 堆積物の年代軸確定のための210Pb測定、2) 一次生産を復元するための色素解析、3) 大気からの負荷影響等を検証するための同位体分析を実施した。年代測定の結果、白駒池では表層から深度6 cmまで過剰210Pbの減衰率がほぼ一定で、CRSモデルより推定された堆積物の年代は、137Csのピークから推定される年代と調和的であった。過剰210Pbの強度が深度20-21cmで検出限界を示したことから、この深度が約150年前頃、また深度6-7cm層が1960年頃と推測された。四尾連湖では、表層から深度17cmまで過剰210Pbは顕著な減少が認められず、137Cs放射能強度は深度22-23cm 付近から増加したことから、この層準が1950年頃と推察された。137Csから推定される年代とCRSモデルより推定された年代は調和的であったが、上述のとおり表層から深度17㎝付近まで過剰210Pbの顕著な減少が認められないことから、四尾連湖では表層から深度17cm付近まで攪乱されている可能性が高い。一方、色素や同位体の結果から、小田の池では、窒素同位体比は1950年代より増加したが、1970年代に収束、その後1990年代以降から2000年代半ばにかけて、顕著に減少することが判明した。興味深いことに、窒素同位体比が顕著に減少する1990年代以降から2000年代半ばにかけて、大気からの負荷影響を反映する球状炭化粒子の濃度が増加していること、一次生産を反映するクロロフィル分解産物も僅かに増加していることが判明した。以上から、九州地域の山岳湖沼においても大気からの負荷影響がここ20年ほどの間で増大していること、そしてその影響が湖沼の一次生産の増加を誘引している可能性が示された。
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Organic Geochemistry
巻: 103 ページ: 125-135
10.1016/j.orggeochem.2016.11.001
Journal of Oceanography
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1007/s10872-016-0404-y