研究課題/領域番号 |
26340008
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
丸尾 雅啓 滋賀県立大学, 環境科学部, 准教授 (80275156)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 淡水域 / 硫黄 / 錯生成 / スペシエーション / 配位子 |
研究実績の概要 |
1)高安定度錯体を検出する方法として、Pesudopolarographyを適用し、代表的な富栄養湖である手賀沼中央部で採取した試料について錯体の検出を試みた。今年度は2015年12月に手賀沼大橋中央(上手賀沼のほぼ中央)から大型柄付きビーカーを用いて採取した試料について分析を行った。2014年度は岸近くで採取した試料について測定を行ったところ、銅を添加するタイミングにより、得られるポーラログラムに違いが見られた。今年度は試料採取濾過直後に銅を添加した場合と、24時間後に添加した場合に違いが見られなかった。採水を行ったのが生物活性の低い12月であり、活性が高い(易分解性)の配位子が少なかった可能性が考えられる。中央部と異なり、沿岸では活性が高い配位子が堆積物から水中へ拡散している可能性がある。いずれの場合においても、十分な安定度を持つと考えられる低電位領域において半波電位が複数検出されたことより手賀沼では銅をはじめとする錯形成能が高い金属はほぼすべて高安定度錯体を形成している可能性が高いことが示唆された。このうち硫黄を含む強い配位子がどの程度存在するか、2016年度に測定を行う予定である。 2)琵琶湖においてFe(II)の配位子を検出するために競争配位子としてFerrozineを用い、長光路セルを適用して吸光光度法-配位子滴定法による配位子検出を行った。結果、ほぼすべてのFe(II)は配位子と結合している可能性が示された。また試料処理の際に溶存態Fe(II)から孔径0.05μmのメンブランフィルターを用いてコロイド様物質を除去して同様の測定を行ったところ、Fe(II)濃度、配位子濃度に明確な低下が認められた。Fe(II)のかなりの部分は真の溶存態ではなく、コロイドに含まれている可能性が高い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Fe(II)の配位子の濃度、錯体の安定度については予定通り研究が進行しており、Fe(II)錯体のかなりの部分は真の溶存態よりむしろコロイド様である部分が大きいことが明らかになってきた。今後このFe(II)コロイド形成と、硫化物の関係について精査する必要がある。 平成27年度までに誘導体化-HPLCを用いた硫黄化合物、硫化水素の分離定量に着手する予定であったが、生体内では比較的高濃度に存在する化合物であっても、水中の溶存成分濃度は相当低いことが予想される。このため水中の化合物濃縮法の確立に時間をかける必要があり、この部分が未完成である。手法については平成28年度当初に確立して、研究に適用し、計画を完了する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
誘導体化-HPLCによる硫黄化合物測定をまず琵琶湖で行い、次に集水域(河川・処理水・地下水・田面水)におけるこれら化合物の濃度分布について調査する。比較対象として、富栄養湖(手賀沼・宍道湖・児島湖など)でも調査を行い、栄養状態の違いによる硫黄化合物の種組成、濃度の差について比較する。 Fe(II)については今年度通年でコロイド様物質に含まれる濃度の調査を行い、Fe全体の循環に与える影響について考察する。また、コロイド態に含まれると考えられる硫黄(S(II))の寄与についても、実際に硫化物濃度を測定し、Fe(II)との関係を明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
誘導体化-HPLC測定による硫黄化合物同定法の開発が平成27年度内に完了しなかったため、誘導体化試薬、濃縮カラム等を次年度に購入することにした。比較的高価な試薬、標準が多く、やや多めに予算を残して、年度当初にこれらの物品を購入することとしたためである。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度から繰り越した費用については、理由に述べたようにHPLC誘導体化試薬、濃縮カラムを購入し、年度の初めに使用する予定である。
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