研究課題
大気エアロゾルは、呼吸によって生体内に入り込み健康に悪影響を及ぼすことが知られている。エアロゾルの帯電状態については、それが粒子の生体沈着に関わるため重要であるにも関わらず、ほとんど研究が進んでいない。そこで本研究では、実環境大気エアロゾルの帯電状態を解明することを目的として、その計測手法の開発を行った。平成28年度は、電気移動度法を用いた実環境大気中エアロゾルの帯電状態の測定を進め、下記に示す重要な成果を得た。荷電中和器を通したエアロゾル粒子のうち、荷電数0の粒子の存在割合は25~30%の範囲となり、測定日による違いは最大で5%の範囲に収まることがわかった。また、測定日による荷電分布のパターンは互いによく類似していた。したがって中和器を通過させた際には、概ね一定の荷電分布を持った粒子群を平行板デバイスに導入することができているといえる。また、中和器を通過させると粒子の荷電分布はやや負の側に偏ることがわかった。これは正負のイオン移動度の差によるものと考えられる。一方、実環境大気中エアロゾルの荷電分布の測定結果は、中和器を通過させた場合の結果とは異なっていた。例えば荷電数0の粒子の存在割合は20~40%の範囲となった。また、荷電分布はやや負の側に偏っていた。次に、エアロゾルの帯電状態に対する湿度の影響を検討した。その結果、絶対湿度が低い日には、荷電数0の粒子の存在割合が増加することがわかった。また、荷電分布の形状は、測定日や気象条件が変化しても、やや負側にシフトしたボルツマン平衡荷電分布に常に類似しており、ほとんどの粒子は±3価の範囲で荷電していた。荷電数0の粒子の存在割合と絶対湿度の相関は高かった(r2 = 0.86) が、相対湿度との相関は低かった (r2 = 0.27)。これより、エアロゾルの帯電状態は相対湿度ではなく絶対湿度に大きく影響されている可能性が示された。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件) 備考 (2件)
Environmental Toxicology
巻: 32 ページ: 1047-1054
10.1002/tox.22303
クリーンテクノロジー
巻: 27 ページ: 37-40
Asian Journal of Atmospheric Environment
巻: 10 ページ: 1-12
10.5572/ajae.2016.10.1.001
Atmosphere
巻: 7 ページ: 33
10.3390/atmos7030033
http://www.applc.keio.ac.jp/~okuda/
http://www.applc.keio.ac.jp/~okuda/research/index.html