研究課題
本研究では、これまで申請者が主体となって推進してきた塩素化多環芳香族類(ClPAHs)の環境汚染調査を更に深化させ、これまで未解明であった高塩素化PAHsの環境実態調査を実施した。本研究では、はじめにフルオランテン(4環系)、ピレン(4環系)、ベンゾaピレン(5環系)を母核としてそれぞれの化合物の高塩素化体(塩素置換数3以上)の合成を行った。その結果、5種類の高塩素化PAHsの合成に成功した。そこで、これら高塩素化PAHsの大気や土壌環境、さらに水環境試料として魚中の濃度を分析した。大気環境において高塩素化PAHsは主に粒子状物質に存在しており、その気中濃度は数十fg/m3の濃度で存在していた。その中でも特に、4塩素化フルオランテンは高濃度に存在していた。さらに4塩素化フルオランテンの光分解性を調べたところ、これまでの塩素化PAHsの中でも最も光安定性を有していることがわかった。よって、この高い環境残留性は、その高い光安定性に起因することが示唆された。さらにこれら高塩素化PAHsの発生源をレセプターモデルであるPMFを用いて解析したところ、従来から知られている自動車や工業活動などの寄与は小さく、新たな発生源が大きく関与していることが示唆された。一方、環境土壌や魚(イワシ、サンマ、ヒラメ)において、今回合成した高塩素化PAHは検出されなかった。これら試料は夾雑物の影響が大気試料に比べ極めて大きいため、分析方法の問題で検知できなかった可能性がある。この点は今後に向けた重要な課題になると思われる。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (2件)
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