2015年12月に日本-北米間を定期運行する貨物船に低流量型大気中酸素濃度連続測定装置を搭載し観測を開始した。しかし、除湿トラップが予想以上に早く詰まるという問題や、船の揺れによってO2計の出力が大きく変動するといった問題に直面したため、これらの問題解決を検討した。 除湿トラップはドラム型のガラス容器とステンレス管を組み合わせたものを用いたが、ガラス容器は片方の側面のみを冷却するものであったため冷却効率が悪く、結果としてステンレス管が頻繁に詰る原因となった。そこで、ガラス容器を管型に変え、冷却したアルミブロックにガラス容器を挿入したものを1段目の除湿トラップとした。この変更によって、約1か月間の航海期間中詰ることなく除湿できるようになった。 貨物船は10~20秒程度の周期で複雑に揺れ、それに伴ってO2計の出力が数十ppmの振幅で変動した。当初は加速度センサーを用いて揺れを計測し、数値的に揺れの影響の除去を試みたが、うまくゆかなかった。一方、船上観測では25時間毎に2本の標準ガスを32分間ずつ分析装置に導入しているが、観測開始から2016年11月までの結果を見ると標準ガスのO2濃度の標準偏差は2.1ppmであった。このことから、ある程度の時間を平均することで揺れの影響はかなり抑えられることが分かった。一方標準ガスのCO2濃度の標準偏差は0.05ppmと揺れの影響は小さいことが分かった。以上のことから、1時間の平均値を測定結果として用いることとした。 貨物船で同時に実施している大気試料のフラスコサンプリングと連続測定の結果を比較するとO2濃度およびCO2濃度の差(フラスコ-連続)と標準偏差はそれぞれ、0.4±2.2 ppmおよび0.04±0.41 ppmであった。また、約1年間の観測から、北太平洋の広い領域における酸素濃度およびCO2濃度の季節変動を明らかにすることができた。
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