申請者は長らく機能不明であったDNA修復関連因子MMS19が新規複合体CIAX (cytosolic iron-sulfur cluster assembly complex)を形成し、鉄硫黄クラスターを標的タンパク質に付加する反応において中心的役割を果すことを明らかにした。本研究課題ではCIAX複合体と発がん、遺伝病の発症、DNA修復ネットワークとの機能関連、鉄硫黄クラスター付加反応の素過程解析等を課題として研究を行っている。CIAXはMMS19、CIAO1、IOP1、MIP18から成る。本年度は昨年度から引き続き各種がん細胞におけるCIAXコンポーネントの発現量解析(mRNA)をqPCRにより行った。興味深いことに血球系細胞、中でもマクロファージ様分化能を有する細胞においてCIAXコンポーネントの発現量が顕著に増加している結果を得た。本年度は昨年度貪食能を解析したヒト白血病由来THP-1細胞に加え、ヒトリンパ腫由来U937細胞(どちらもマクロファージ様分化能をもつ)において同様の解析を試みた。以上の解析に加え、本年度は鉄硫黄クラスター付加反応の素過程解析を実施した。はじめにミトコンドリアで合成された鉄硫黄クラスターをCIAX複合体に受け渡す、「受け渡し過程」を顕微鏡実験により解析した。次に、様々な状況証拠から鉄硫黄クラスターの受取りタンパク質である可能性が高いIOP1タンパク質の解析を行っている。IOP1は他のCIAXと一部挙動が異なり、CIAX複合体以外の因子との相互作用が考えられる (Seki et al. JBC 2013)。この標的解析のため、新たなアッセイ系の構築(構築中)を行った。
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