研究実績の概要 |
放射線や変異原物質は、致死的な損傷として二本鎖切断(DSB)を生成する。しかし、DSBと同時に生成する致死損傷であるDNA-タンパク質クロスリンク(DPC)やDNA鎖間架橋(ICL)の細胞致死に対する寄与については不明な部分が多い。本研究では、変異原物質としてアルデヒド化合物に注目し、修復欠損細胞の感受性および細胞における致死損傷の誘発に基づき、細胞致死に対するDSB、 DPC、 ICLの寄与を検討した。MRC5-SV細胞を単純アルデヒド(formaldehyde, FA)、アルキルアルデヒド(acetaldehyde, AA)、短鎖α,β不飽和アルデヒド(trans-2-pentenal, PET)、長鎖α,β不飽和アルデヒド(4-hydroxynonenal, HNE)で処理し、DSBおよびDPC誘発を調べた。DSB誘発はすべてのアルデヒドで認められたが、処理後24-48時間に起こるアポトーシスに由来していた。DPCについては、誘発するアルデヒドと誘発しないものがあった。ICL誘発については、相同組換え修復(HRR)欠損およびXPF欠損CHO細胞の感受性を指標とした。両細胞は、FA及びAAに高感受性を示したが、PET及びHNEには弱い感受性しか示さなかった。ファンコニー貧血修復経路欠損細胞もFA及びAAに高感受性を示したが、PET及びHNEには弱い感受性しか示さなかった。以上の結果から、アルデヒドによる細胞致死には、DNA損傷に依存する機構と依存しない機構があることが明らかになった。さらに、DNA損傷に依存する細胞致死には、ICLが関わっていることが示された。
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