研究実績の概要 |
放射線やアルデヒド損傷が誘発するゲノム損傷は、二本鎖切断(DSB)に加え、DNA-タンパク質クロスリンク損傷(DPC)が致死に影響を及ぼす主要な損傷であることを明らかにした。しかしながら、どのような種類のタンパク質がDNAにクロスリンクしているのか明らかにされていなかった。そこで本年度は、western blottingによりそれらを特定した。また、コントロールとして濃度が既知のスタンダードタンパクと同時に解析することによりDNA中に含まれるタンパクの結合量を定量した。 その結果、低酸素状態のマウス腫瘍(SCCVII)をX-ray 60Gy照射した放射線によって生じるDNAに結合したタンパク質は Histone(H1-H4) ; 267.9 個/DNA10の7乗bp、Topoisomerase I ; 23.7 個/DNA10の7乗bp、 Topoisomerase IIa ; 54 個/DNA10の7乗bpであった。一方、Ku70, PARPI, Topoisomerase IIb の結合は見られなかった。また、前年度の蛍光比色定量の結果から、低酸素条件下で生じる全体のDPC生成量は、2.7-6.4 個/10の7乗 bp/Gyであるため、60Gyでは180から400個のタンパクが結合すると見積もられる。これらの結果と本結果を合わせて考えると、放射線で結合する主要なタンパク質は、Histone、 Topoisomerase I, topoisomeraseIIa であると考えられる。
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