研究課題
MUTYH (535aa) は8-oxoGに対して取り込まれたadenineを除去し、G:C→T:A変異を抑制するDNA修復酵素で、MutSαの構成因子MSH6, Ape1, PCNAと相互作用する。Ape1との相互作用はDNA修復能を増強するが、in vitro酵素反応系では、MutSαやPCNAとの相互作用はMUTYHのDNA修復能に影響を与えず、これらの相互作用の生理学的意義は不明である。MUTYHと複合体を形成するMMRタンパク質とPCNAはアルキル化剤による細胞死誘導時に相互作用が増強される。さらに、MUTYHはDNA損傷応答に重要な働きをするRad9-Hus1-Rad1 (9-1-1) 複合体とも相互作用する。従って、MUTYHはこれらの相互作用を介して細胞死誘導に重要な働きをしていることが考えられる。平成26年度はMUTYH/MutSα/PCNA複合体の機能およびその中でのMUTYHの役割を解明するために、酸化ストレス負荷により形成されるMUTYH複合体を免疫沈降法により単離し、複合体に含まれるタンパク質群をイムノブロット法で検討した。その結果、MUTYHはDNA polymerase δおよびMLH1と相互作用することが解ったが、9-1-1複合体との相互作用は確認できなかった。一方、MUTYH/PCNA相互作用に及ぼすS524のリン酸化の影響を解析するためにMUTYHのPCNA結合領域にS524DあるいはS524A変異を持つFlag-MUTYHを作製し、これらの安定発現株の樹立を行っている。また、酸化ストレス誘発MUTYH/MutSα複合体形成に必要最小なアミノ酸(領域)を決定するために、MutSαと相互作用する領域に様々な欠損や置換変異を導入した変異型Flag-MUTYHを作製している。
2: おおむね順調に進展している
1)酸化ストレス誘発細胞死誘導時のMUTYHタンパク質複合体の解析: KBrO3処理したFlag-MUTYH安定発現HEK293細胞より酸化ストレスにより形成される複合体を抗Flag抗体による免疫沈降法により単離し、MUTYHと複合体を形成するタンパク質群をイムノブロット法で検討した。その結果、新たにDNA polymerase δおよびMLH1がMUTYHと複合体に含まれることが解った。しかし、抗Rad9抗体、抗Rad1抗体あるいは抗Hus1抗体を用いてイムノブロット法で検討したが、9-1-1複合体との相互作用は確認できなかった。2)酸化ストレス誘発時のMUTYHとPCNAとの相互作用の解析: MUTYHのPCNA結合領域に含まれる524番目のセリン(S524)がリン酸化される。酸化ストレス負荷とS524のリン酸化との関連は不明であるが、PCNAとの相互作用に影響することが考えられる。そこで、リン酸化S524をミミックした、セリンをアスパラギン酸に置換したS524D、およびリン酸化されないようにセリンをアラニンに置換したS524Aを持つFlag-MUTYHを作製した。同時に、PCNAとの相互作用ができない変異型MUTYH (F518A, F519A) も作製した。現在、これらの安定発現株の樹立を行っている。3)酸化ストレス誘発時のMUTYHとMMRとの相互作用の解析: MUTYHはアミノ酸232-254の領域でMutSαと相互作用することが知られている。本年度は先ずこの領域のアミノ酸で9種の脊椎動物で保存されているI235, D238およびW249のアラニン置換変異を導入した変異型MUTYHを作製した。現在、これらの安定発現株の樹立を行っている。
1)酸化ストレス誘発細胞死誘導時のMUTYHタンパク質複合体の解析: MUTYH/MutSα/PCNA複合体の全体像を明らかにするために、Flag-MUTYHを安定に発現する細胞株を実験材料に用い、酸化ストレス負荷により形成される複合体を抗Flag抗体による免疫沈降法により単離する。単離した複合体を質量分析にかけ、酸化ストレス負荷に依存してMUTYHと複合体を形成するタンパク質群を同定する。新たに複合体の構成タンパク質が見つかった場合は、RNAiによりそれらの発現を抑制した細胞を用いて、酸化ストレス誘発突然変異と細胞死の解析を行い、それらのタンパク質の複合体における機能解析を行う。2)酸化ストレス誘発時のMUTYHとPCNAとの相互作用の解析: 平成26年度に作製した、MUTYHのPCNA結合領域に含まれるセリン(S524)のリン酸化をミミックした、セリンをアスパラギン酸に置換したS524D、およびリン酸化されないようにセリンをアラニンに置換したS524Aを持つFlag-MUTYH、およびPCNAとの相互作用ができない変異型MUTYH (F518A, F519A)の安定発現株の樹立を行い、酸化ストレス誘発突然変異と細胞死の解析を行うことで、MUTYH/PCNA相互作用の意義を解明する。3)酸化ストレス誘発時のMUTYHとMMRとの相互作用の解析: MutSαと相互作用するMUTYHのアミノ酸232-254の領域内で9種の脊椎動物で保存されているI235, D238およびW249のアラニン置換変異を導入した変異型MUTYHを平成26年度に作製した。これらの安定発現株を樹立し、それらの細胞を用いて酸化ストレス誘発MUTYH/ MutSα複合体形成について検討し、酸化ストレス誘発突然変異と細胞死の解析を行うことで、MUTYH/MutSα相互作用の意義を解明する。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (12件) (うち招待講演 2件)
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