平成28年度は、平成27年度引き続き、i) DNA修復酵素の欠損株の樹立と欠損株における変異頻度やスペクトル、相同組換え頻度の解析、ii)それらの修復遺伝子のプロモーター活性の測定、iii) 損傷ヌクレオチドに対する脱ピロリン酸酵素の候補遺伝子産物の生化学的解析を行った. i)では、酸化DNA損傷の代表であるmutM候補のTTC1454欠損株、mutY候補のTTC1535欠損株において標的遺伝子supFにおける変異頻度を検討したが、有意なmutator phenotypeは確認できなかった.今後、新規に重複欠損を可能とする遺伝子欠損法の樹立が必要である. ii)本研究で細胞にあらかじめ光照射すると光回復能が増強されることを見いだしている。そこで平成26年度に樹立したプロモーター活性測定系pRA57を用いphr遺伝子の上流部分のプロモーター活性の測定を試みたが、光照射によるphr上流部のプロモーター活性は確認できなかった。すなわちrepressorであるLitRが光照射によりはずれ、その下流のTTC0055が誘導され、このTTC0055がcrtB-phr operonの転写因子として機能するため、光回復能が光照射により誘導されたと考えられた. iii)では、ゲノムデータベースから酸化ヌクレオチドに対する脱ピロリン酸酵素の候補遺伝子TTC0511(Nudix2)およびTTC0091(Nudix5)については、His-tag/Niセファロースにより精製を行い, 8-oxodGTPなどの酸化ヌクレオチドを基質としてHPLCにおける3リン酸体と1リン酸体の定量により活性を解析した.しかしながら、それらのタンパク質の少なくとも8-oxodGTP、8-oxorGTP、dITPに対するpyrophosphatase activityは確認できなかった.
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