大量生産品(HPV)であるナノマテリアルの生態毒性は国際的な懸案事項の一つである。特に抗菌作用を持つことから保健衛生用品として国際市場の約半数を占める銀ナノ粒子は,生態リスクが最も高い物質の一つとされている。本研究では,銀ナノ粒子の中で使用量が多いとされる銀ナノコロイド(SNC)のメダカ受精卵および孵化仔魚に対する銀ナノ粒子の発生および自然免疫に対する影響研究を行った。マイクロアレイ解析および定量PCRの解析から,SNC曝露により細胞膜表面の異物受容体あるいは粘膜形成などに関わっている糖鎖関連遺伝子の発現が攪乱されていることを明らかにした。そのほか,免疫に直接かかわる応答関連因子についても発現抑制が確認された。SNC曝露によって異物認識,生体防御粘膜,免疫応答に異常が確認されたことから,魚病菌に対する抵抗性の低下すなわち感染の増大が懸念されたことから,Edwardsiella tardaを用いた感染実験を行い。生存率を比較した結果,受精卵の場合,①SNC 0.05 mg/L,②E. tarada感染,③SNC+E. tarada,④対照区,のそれぞれの条件で,100%,20%,20%,100%であった。孵化仔魚の場合,100%,30%,30%,100%であった。成魚の場合,100%,80%,20%,100%であった。以上の結果から,SNC曝露によってメダカ成魚の感染が増大することが明らかとなった。さらにメダカ体内におけるE. tardaの挙動を評価するために,GFP遺伝子組換えE. tardaを作出した。メダカ孵化仔魚をGFP組換えE. tardaに感染させた後,DAPIによる核染色を経て,共焦点顕微鏡およびLightsheet顕微鏡を用いて観察を行った。その結果,E. tardaはメダカの血管に侵入し,体全身に感染して敗血症様の症状を呈することが考えられた。
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