研究課題/領域番号 |
26340032
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
赤田 尚史 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (10715478)
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研究分担者 |
高山 定次 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (40435516)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | トリチウム / FWT / OBT / 迅速化 / マイクロ波 / 核融合 |
研究実績の概要 |
水素の放射性同位体であるトリチウムは、植物などの環境試料中に「組織自由水トリチウム」(FWT)および「有機結合型トリチウム」(OBT)として存在している。FWTとOBTを定量するためには、それぞれを水として回収するのが一般的であるが、真空・凍結乾燥法による水分回収や乾燥有機物の燃焼による水分回収等、水素を水として回収するための前処理手法はかなりの時間を要する。本研究課題では、マイクロ波と有機物の相互作用に着目し、マイクロ波の電場・磁場を組み合わせることで有機物の加熱・乾燥・灰化機構を明らかにすると共に、マイクロ波を用いたFWT/OBT分析前処理手法を確立し、既存の手法に対しての効率化を評価する。 平成27年度は平成26年度に設計したマイクロ波加熱システムを制作した。制作したシステムは、マイクロ波加熱炉、管状炉、冷却トラップからなる。この中で、マイクロ波加熱炉は、正六角形中割れ型(L: 600mm)で内部対面寸法を183.6mm とし、マイクロ波導入口を3箇所設けた。このマイクロ波加熱炉の中心には外形50mmの石英管を入れることができ、試料の加熱・乾燥・灰化を行う。 作成したシステムを用いて、加熱・水分回収実験を行った。石英管(L: 1200mm)内に水をしみこませた紙タオルを設置し、両端に6mm径の枝付フランジを取り付けてマイクロ波加熱炉に設置した。加熱した水分を冷却トラップへ導くため、石英管の上流部分より窒素ガス(2L/min)を供給し、100Wのパワーでマイクロ波を加熱炉に導入した。その結果、30分の加熱で約60%の水分が試料より排出されていたが、冷却トラップには回収されず、石英管内に凝結していた。ガスフローと回収部分の改修が必要である。 また、今後のマイクロ波燃焼実験の際に必要な松葉の国際標準試料(NIST-1575a)について、従来の燃焼法を用いて「非交換型OBT」を測定した結果、0.75 Bq/kg-dryの数値が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規にマイクロ波加熱システムを制作する際には、設計・作成した炉体内でのマイクロ波のふるまいについて詳細を把握する必要がある。本年は、制作したマイクロ波加熱炉を用いた試験運転に時間を要し、有機物燃焼試験までは到達できなかった。しかし、本年度実施予定だった、松葉標準試料の従来法による分析を行うことができた。また、初年度の研究成果については国際学会で発表を行うと共に、査読付き英語論文として公開できたことから、ここまではおおむね順調に推移していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度は制作したシステムの性能試験を行い、基礎データを取得することができた。また、実際の含水試料の加熱試験により、試料の脱水を確認することができた。今後は、石英管内での流体の流れに負荷の無いような、システムに回収すると共に、発信機を強化(150W→2.5kw)し、加熱・乾燥試験を行う。また、酸素ガス供給部を追加すると共に、管状炉に触媒を取り付け、燃焼試験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は、新規にマグネトロン発振器を購入し、新たに作成したマイクロ波加熱炉で実験を進める予定であった。しかし、製作したマイクロ波加熱炉からのマイクロ波の漏えい等、実験環境の安全性を最優先に確認するために、入力パワーの小さい既存のマグネトロン発振器等を用いて安全確認実験を行った。そのため、次年度使用額が生じた。平成28年度は新規に1kwのマグネトロン発振器を購入し、平成27年度に実施した実験の10倍の入力パワーを用いて有機物とマイクロ波の相互作用について検討を行う。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度はマグネトロン発振器を購入し、高入力パワーにおける有機物とマイクロ波の相互作用について検討を行うと共に、加熱乾燥と燃焼に関する実験を行う。 また、植物中FWTおよびOBT濃度を支配すると考えられる降水のトリチウム濃度について、長期的なデータを取りまとめると共に得られた結果をまとめて国際会議で発表を行う。
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