研究課題
水素の放射性同位体であるトリチウムは、植物などの生体組織(有機物)中に、組織自由水トリチウム(FWT)および有機結合型トリチウム(OBT)として存在している。OBTはFWTに比べて線量換算係数が約2.3倍高いため、OBTとFWTを弁別して計測することは放射線防護の観点からも重要である。しかし、その操作は煩雑であるとともにかなりの時間を要する。本研究課題では、マイクロ波と有機物の相互作用に着目し、マイクロ波の電場と地場を組み合わせることで有機物の加熱・乾燥・灰化機構を明らかにする。また、マイクロ波を用いたFWT/OBT分析前処理手法を確立することを目的とする。平成28年度は平成27年度に制作したマイクロ波加熱システムを用い、松葉(約30g)を対象として乾燥試験を実施した。その際、石英管内試料設置場所から出口側フランジまでを管状炉を用いて80℃に加熱し、水分の凝結を防止した。また、試料設置場所付近に付着する水分を効率よく捕集するため、15分毎に石英管を180℃回転させた。窒素ガスを5L/minで流しながらマイクロ波150Wを90分入力した結果、コールドトラップでの水分回収率は60-70%程度であった。また、回収水分には松葉の匂いがあり、低沸点炭化水素が捕集されていることが示唆された。そのため、石英管内下流側に白金を担持した触媒を設置し、管状炉で450℃に加熱しながら水分回収を実施した。その結果、水分回収量は同様であったが回収水のUVスペクトルからは有機物のピークが認められなかったことから、回収水を蒸留することなくトリチウム測定が可能であり、短時間化が可能であることが示唆された。平成26年度に使用した既存の大型マイクロ波加熱炉を用いて窒素ガスおよび酸素ガスを流しながら燃焼実験を実施した結果、マイクロ波を用いた加熱によりFWT回収からOBT回収を一連の操作で短時間で実施できた。
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Radiation Environment Medicine
巻: 5 ページ: 29-32