研究課題
(最終年度に実施した研究の成果)我々は植物のオゾン障害や応答・耐性のメカニズムを解明するため、モデル植物シロイヌナズナを用いてオゾン感受性突然変異体を単離、解析している。前年度までに報告したように、単離した突然変異体の一つに光呼吸系酵素グリコール酸オキシダーゼ(GOX)遺伝子の破壊が原因となっているものがあり、オゾン耐性へのGOXの関与が示唆された。本年度は、オゾン耐性への光呼吸の関わりについてさらに調べるため、GOX以外の光呼吸系酵素の遺伝子が破壊された突然変異体の種子を入手し、そのオゾン感受性を調べた。その結果、グルタミン酸:グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼやヒドロキシピルビン酸レダクターゼの破壊株が、野生株よりも高いオゾン感受性を示すことが分かった。(研究期間全体を通じて実施した研究の成果)光呼吸は、炭酸固定(カルビン回路)のキーエンザイムであるリブロース-1,5-ビスリン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼが酸素と反応することで生じるホスホグリコール酸を、ATPやNADPHを消費しつつ、カルビン回路の基質であるホスホグリセリン酸へと再生する反応系であり、細胞内に過剰な還元力やエネルギーが蓄積されるのを緩和し、ストレスを軽減する役割を担うと考えられている。本研究により、光呼吸は、おそらくこのような作用を通して、オゾン耐性においても重要な役割を果たすことが強く示唆された。ただし、異なる光呼吸系酵素破壊株の間でオゾン感受性にはっきりとした差がみられたことから、光呼吸は過剰な還元力・エネルギー蓄積の緩和以外の作用によってストレス応答と関わっている可能性も示唆された。
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Plant and Cell Physiology
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10.1093/pcp/pcx027