研究課題/領域番号 |
26340042
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
鰐渕 英機 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90220970)
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研究分担者 |
魏 民 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70336783)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 環境 / 癌 / 病理学 / プロテオーム / ゲノム |
研究実績の概要 |
本研究は、職業性胆管がんの発症機構の解明と原因物質を検出するための動物モデルの開発を目的とする。実験1で、職業性胆管がんの原因物質のひとつとされている1,2-ジクロロプロパン(1,2-DCP)の肝毒性および毒性発現機序を検討するために、ハムスターおよびB6C3F1マウスに1,2-DCPを単回、3日間および4週間反復して強制胃内投与を行った。その結果、高用量の1,2-DCPの反復投与では、ハムスターおよびマウスの肝臓において、小葉中心性肝細胞壊死が全例でみられ、同領域内でCYP2E1の強い発現がみられたが、GST-T1の発現はみられなかった。一方、非壊死部の肝細胞においてCYP2E1の発現はみられなかったが、GST-T1の高発現がみられた。なお、マウスでは肝細胞および胆管上皮細胞においてGST-T1の発現が認められたが、ハムスターでは肝細胞のみに認められた。これらのことから、ハムスターおよびマウス肝細胞において、CYP2E1が1,2-DCPを代謝することで肝細胞毒性を誘発し、GST-T1は肝細胞を保護する解毒酵素として働く可能性が示唆された。実験2で、ハムスター胆道系および膵管に対する1,2-DCPの発がん修飾作用について、BOP誘発ハムスター膵・胆道発がんモデルを用いて検討を行った。ハムスターの肝内胆管および膵管における前がん病変および腫瘍性病変の発生頻度・発生数に1,2-DCP投与による有意な差は認められなかった。1,2-DCPはハムスター肝内胆管および膵管に対して発がん促進作用を有さないことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在まで、研究が順調に計画通り進捗しており、本年度の目標がすべて達成できた。本年度の研究結果により、ハムスターおよびマウス肝細胞における毒性発現機構がはじめて明らかになった (Gi M., Wanibuchi H. et al., Toxicol Sci., 2015)。また、胆管発がん高感受性動物であるハムスターに対して1,2-DCPは胆管発がん促進作用を有さないことが判明した。本年度の研究成果は、1,2-DCPのリスク評価に重要な知見を提供するものである。
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今後の研究の推進方策 |
1.これまでのラット、マウス、ハムスターを用いた発がん性試験において、ジクロロメタン(DCM)および1,2-DCPの単独投与による胆管発がん性は認められていない。ヒトの職業性胆管がんの発生環境には複数物質のばく露が指摘されていることから、今後ラットを用いて1,2-DCPとDCMあるいは他の有機溶剤との複合ばく露による発がん性を評価する。
2.1,2-DCP誘発肝毒性におけるCYP2E1およびGST-T1の役割をさらに検討するためにCYP2E1欠損マウス及びその野生型マウスを用いて、1,2-DCPの反復投与を行い、肝臓及び胆管における薬物酵素発現量と活性、および病理組織学的評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
BOP誘発ハムスター膵・胆道発がん性試験では、1,2-DCPの発がん促進作用は認められなかったため、予定していた修飾作用のメカニズム解析を行う必要はなくなり、実施しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度以降に請求する研究費を合わせた使用計画としては、1,2-DCP投与群の動物数、および解析項目を増やして、より詳細な検討を行うことを計画している。
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