研究実績の概要 |
本研究は、職業性胆管がんの発症機構の解明と原因物質を検出するための動物モデルの開発を目的とする。 1,2-DCPおよびDCMの複合ばく露による発がん性について検討した。雄性C3Hマウスに、1,2-DCPを0 (対照群)、 500 mg/kg (単独ばく露群)、1,2-DCPおよびDCMを各々500 mg/kg の用量(複合ばく露群)で週2回強制胃内投与を行い、投与開始より52週で剖検を実施した。その結果、複合ばく露群は対照群および単独ばく露群と比較して、肝細胞腫の発生率および発生個数の有意な増加がみられた。1,2-DCP単独ばく露より1,2-DCPおよびDCMの複合ばく露が強い肝発がん性を示すことが明らかとなった。さらに、マイクロアレイにおいて、複合投与群の腫瘍で特異的に、腫瘍細胞増殖遺伝子の発現変動が12個みられ、さらにそのうち4つの遺伝子をmRNA解析したところ、複合投与群の非腫瘍部と比較して、腫瘍で腫瘍細胞増殖遺伝子であるIgebp1、Bmp7、Ngf、Anxa2の有意な発現増加がみられ、マイクロアレイと同様の結果を呈した。 以上より、1,2-DCPおよびDCMの複合的な曝露は、1,2-DCP単独曝露と比較してより強い肝発がん性があることが明らかとなった。また、その腫瘍発生・増悪メカニズムとして、細胞増殖関連因子の発現亢進により、多岐にわたるシグナル経路が活性化されることが示唆された。また本研究が1,2-DCPおよびDCMのリスク評価において、単独曝露における影響だけでなく複合曝露によるリスクについても、重要な知見の提供に貢献することができたと考える。
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