研究実績の概要 |
高濃度の銅を蓄積することのできる地衣類ヤマトキゴケを構成する共生藻と共生菌に対して金属が与える影響を調べるため、平成26年度の野外調査で採集していた12点のヤマトキゴケについて、銅、色素、二次代謝物の分析を行った。その結果、銅濃度と色素濃度の間に相関は見られなかったが、銅ストレスの指標となる色素の比が銅濃度と負の相関関係にあることがわかり、共生藻が銅ストレスを受けていることが示された。また、高濃度の銅を蓄積していたサンプルについては、主要な二次代謝物の1つであるアトラノリンの濃度が銅濃度と負の相関関係にあることが示され、この二次代謝物を生成する共生菌も銅ストレスを受けていることが示唆された。以上から、黄砂の影響を評価するための基礎となる、地衣類の金属汚染への応答に関する理解が深まった。 平成26年度に本研究で構築した地衣成分分析システムによって可能となった地衣類の主要な二次代謝物の半定量分析を実施したところ、主要な二次代謝物の濃度と銅濃度との関係が見出され、本システムの有用性が実証された。 本研究で得られた成果は、他の研究の成果と合わせ、国際会議Colloquim Spectroscopicum Internatinale XXXIX (CSI 2015), 30 Aug-3 Sep, 2015, Figueira da Foz, Portugalに於いてポスター発表された。また、この国際会議の参加報告が研究代表者と国際会議参加者との共著で『X線分析の進歩』誌に投稿され、平成28年3月に掲載された。
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