研究実績の概要 |
平成26-27年度に研究対象としていたヤマトキゴケと同属のオオキゴケについて、平成25年度に銅汚染環境で採集していたサンプルの銅、蛍光、二次代謝物を分析した。銅分析の結果、オオキゴケもヤマトキゴケと同様に高濃度の銅(100 ppm以上)を蓄積する銅ハイパーアキュムレーターであることがわかった。さらに、蛍光分析によって、この地衣類の蛍光強度が銅濃度と負の相関関係にあることが見出され、オオキゴケの蛍光を利用した金属汚染評価の可能性が示された。一方、オオキゴケに含まれる二次代謝物の濃度は銅濃度と相関関係にはなく、この地衣類の地衣体全体の二次代謝物濃度は銅汚染の影響を受けないことが示唆された。以上から、黄砂の影響を評価するための基礎となる、地衣類の金属汚染への応答に関する理解が深まった。また、比較対象として、鉄を高濃度で蓄積するコケ植物イワマセンボンゴケについて、鉄の化学状態を調べるためにメスバウアー分析を行った。その結果、このコケが鉄をジャロサイトという鉱物として蓄積していることが示唆され、X線回折パターンを測定したところジャロサイトの存在が確かめられた。以上から、黄砂の影響を評価するための基礎となる、コケ植物の金属汚染への応答に関する理解が深まった。 本研究で得られたオオキゴケに関する成果は、国際会議The 8th IAL Symposium, Aug. 1-5, 2016, Helsinki, Finlandに於いてポスター発表された。また、イワマセンボンゴケの成果の一部はJournal of Plant Researchに投稿され、平成29年1月に掲載された。
|