研究課題
研究目的:中国砂漠地域を起源とする黄砂粒子や中国都市部で発生する大気汚染粒子(PM2.5) などの大気粒子(エアロゾル)に は,無機物(鉱物)や有機物(生物成分)が含まれ,大陸から外洋へと長距離輸送され,その海洋影響評価は極めて重要な課題である。海洋に沈着したエアロ ゾルから溶出した化学成分は,植物プランクトンや細菌などの栄養塩(リンやチッ素等)や必須微量元素(鉄や亜鉛など)となり,その増殖を促す反面,有害金属(Cu, Pb等)が微生物の増殖 を抑制する場合もある。現在,合衆国と日本の多くの研究グループが,環境実測データ(化学分析,衛生データ等)を使ったモデル計算によるシミュレーションで大気・海洋研究を進めている。これに対し,申請者らの調査研究では,山岳積雪および大気観測の野外調査において,中国から飛来するエアロゾル(黄砂と汚染粒子)の粒子試料を捕集し,太平洋沖合の海水に添加培養する船舶洋上実験を実施することで,黄砂と汚染粒子が海洋微生物へ及ぼす影響を直接検証することを試みてきた。実施内容:数年にわたる海洋実験の結果をまとめたところ,貧栄養海域では,大気粒子(特に汚染粒子)から溶出する硝酸と有機物が,植物プランクトン(大型珪藻)の増殖を著しく促進させることが実証された。海洋と気象の条件が揃えば,越境エアロゾルが一次生産者を大きく変動させる潜在的な影響力があると言える。さらに,最先端の遺伝子解析技術である超並列シーケンサーを導入し,コンピュータを駆使した解析(バイオインフォマティクス解析)によって「海洋細菌への動態影響」を詳細に評価した結果,大気試料を添加した海水では,大気粒子に含まれる「栄養塩」や「細菌群」が大気から海洋へと沈着し,海水中の微生物群集構造を変化させることを実証した。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 6件、 招待講演 2件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
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