研究課題/領域番号 |
26340050
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
山田 悦 京都工芸繊維大学, 環境科学センター, 教授 (30159214)
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研究分担者 |
布施 泰朗 京都工芸繊維大学, 環境科学センター, 助教 (90303932)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | フミン物質 / 藻類由来有機物 / タンパク質様蛍光物質 / 琵琶湖 / 三次元蛍光光度法 / SDS-PAGE / リアルタイムPCR / 難分解性有機物 |
研究実績の概要 |
琵琶湖など閉鎖性水域で近年増加する難分解性溶存有機物質(DOM)の原因解明のため、琵琶湖の水深別水質を解析し、湖水及び底質中のフミン物質や藻類由来有機物等の動態及び特性について解析した。培養した植物プランクトンの藻類由来DOMと琵琶湖水中蛍光物質の比較解析から、一部のフルボ酸様蛍光物質とタンパク質様蛍光物質が、湖内で生産される有機物の指標になると考えられる。藻類由来DOMの寄与を明らかにするため、その生産有機物を濃縮・分離し、三次元蛍光光度法(3-DEEM)及びSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)などで分析し、詳細に特性解析を行った。琵琶湖水中タンパク質様蛍光物質を凍結乾燥と限外ろ過法で濃縮・分離し、SDS-PAGEと蛍光検出-ゲルクロマトグラフ法で解析し、培養した藻類由来DOMの結果と比較した。これらの結果より、琵琶湖水中タンパク質様蛍光物質は藻類由来に類似した分子量のタンパク質を含むことが明らかとなった。 さらに、内部生産DOMへの藻類の寄与を明らかにするため、種特異的なプライマーを用いるリアルタイムPCR(polymerase chain reaction)による藻類の新規なモニタリング法を3種の藻類、藍藻類のMicrocystis aeruginosa、緑藻類のStaurastrum dorsidentiferum、及び褐色鞭毛藻類のCryptomonas ovataについて検討した。種特異的なプライマーを用いてPCRでDNAの熱変性、プライマーのアニーリング、DNAの伸張反応を繰り返すことにより目的のDNAのみを増幅できる。これらモニタリング法を琵琶湖水、プランクトン試料及び藻類培養液などに適用すると共に、藻類由来DOMと蛍光物質を電気泳動法や蛍光検出-ゲルクロマトグラフ法などで解析し、難分解性DOMへの藻類由来DOMの寄与を評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2015年度に計画していたことについては、おおむね順調に進展し、学会で発表すると共に学術誌に英語論文を公表した。さらに英語論文を作成し、学術誌に投稿準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
リアルタイムPCRを用いる藻類の新規なモニタリング法を3種の藻類、藍藻類のMicrocystis aeruginosa、緑藻類のStaurastrum dorsidentiferum及び褐色鞭毛藻類のCryptomonas ovataについて検討した結果、単独系では比較的広い細胞濃度範囲で直線性をもち、再現性も得られた。今後は混合系についてさらに検討すると共に、珪藻類など他の藻類についても適用を検討する。開発したリアルタイムPCRを用いる藻類モニタリング法を琵琶湖水、プランクトン試料、藻類培養液などに適用すると共に、藻類由来DOMを電気泳動法や蛍光検出-ゲルクロマトグラフ法等で解析し、内部生産DOMへの藻類の寄与を明らかにする。SDS-PAGEに加えて二次元電気泳動を用い、タンパク質様蛍光物質の特性を詳細に評価する。環境水中のフミン物質についても、疎水性樹脂や弱塩基性アニオン交換樹脂を用いるカラム分画法と三次元蛍光光度法を用いる迅速法による分析結果の比較を行い、簡易定量法の開発と特性評価を行う。環境水中のフミン物質と藻類由来有機物に及ぼす太陽光や紫外線の影響についても検討する。 湖沼など閉鎖的な水域での難分解性有機物の特性、起源及び物質収支の解析を進めると共に、外部由来のフミン物質と内部生産の藻類由来DOMの難分解性有機物について解析を行う。COD増加への寄与の評価やプランクトン種の変遷との関連についても解析をさらに進めていく。底質フミン物質の溶出などによる湖水への影響や近年、琵琶湖で成層期後期に発生している湖底での溶存酸素量低下の影響についても検討する 2016年度においては、研究成果を学会で発表すると共に研究論文にまとめ、学術誌で公表するなど研究成果を広く発信する。
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