研究課題/領域番号 |
26340051
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
大出 茂 琉球大学, 理学部, 教授 (20117568)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 海洋科学 / 環境質定量化・予測 / 環境対応 / 環境分析 / 二酸化炭素 / タイ / サンゴ礁 / 海洋酸性化 |
研究実績の概要 |
大気二酸化炭素濃度の増大に伴う海水酸性化がサンゴ石灰化に与える影響について研究を行った。サンゴが生息している海水のpHが低下し、アラゴナイト(炭酸カルシウム)に対する飽和度(Ω)が低下するとサンゴ石灰化速度の低下が無機化学(速度論)的見地から予想できる。したがって、沖縄、タイのサンゴ礁観測調査を行い海水の化学分析からサンゴ礁の石灰化と海水のアラゴナイトに対する飽和度(Ω)の関係に関するデータを得た。琉球大学の実験室で、pHを変化させた海水を使ってサンゴ飼育実験を行った。その結果、実験室のサンゴ飼育実験からは、海水pHの低下、すなわちアラゴナイトに対する飽和度(Ω)の低下に伴って、サンゴ石灰化は低下することが明らかになった。さらに、沖縄本島のサンゴ礁観測でも、室内飼育実験と同様の結果が得られた。また、沖縄のサンゴ礁タイドプール(牧港海岸)をフィールドとして、石灰化速度の測定実験だけではなく、塩酸を使って海水のpHを酸性化させて、アルカリ度の減少を観測することからサンゴ礁での石灰化速度を測定する実験を行った。一方、サンゴ骨格結晶に含まれる微量元素および同位体分析からサンゴが生息していた海の環境(温度、pHなど)指標となる元素、同位体に関する検討を行ってきた。その結果、サンゴ骨格中のフッ素、ホウ素(陰イオンとして溶存)がサンゴ生息海水の炭酸イオン(pHとリンク)に規定される可能性があるデータが得られた。さらに、サンゴ骨格中のホウ素同位体と海水pHの関係は、同位体分別からは重要である。しかし、サンゴ骨格中のホウ素の存在状態として、炭酸イオンと置換して存在しているイオン以外に分子状のホウ酸として吸蔵されている可能性もある。今後の問題点を解決することにより海水酸性化がサンゴ石灰化に与え影響を定量的に評価できるように得られた成果をまとめる必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サンゴ骨格中の微量元素および同位体分析からサンゴ礁環境(温度、pH)指標となる元素、同位体を検索する研究を展開してきた。特に、サンゴ骨格中のホウ素含量がpH指標として使える可能性を検討し、研究成果を論文としてまとめるべく準備中である。また、サンゴ骨格中のホウ素同位体と海水pHの関係は、同位体分別からは重要である。しかし、サンゴ骨格中のホウ素の存在状態として、炭酸イオンと置換して存在しているイオン以外に分子状のホウ酸として吸蔵されているホウ素が存在する可能性もある。ホウ素の存在状態が今後の研究課題であることが明らかになった。質量分析計の修理等にかなりな時間と労力を要したが現在は順調に稼働中でありデータの蓄積が期待できる。計画した沖縄及びタイのサンゴ礁観測調査を行い、海水の化学分析からサンゴ礁の石灰化と飽和度(Ω)に関するデータが得られた。シェフィールド大学、マックラード教授とレーザー照射質量分析に対する共同研究を27年度に行った。得られたデータを解析中である。さらに、共同研究を継続する予定である。沖縄のサンゴ礁観測調査および海外での共同研究を通して、海水酸性化がサンゴ石灰化に与える影響を定量的に評価できるよう研究を展開し、成果公表を準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
平成26、27年度の研究成果をもとにして、沖縄およびタイのサンゴ礁において昨年度と同様にサンゴ礁観測調査を継続発展させる。タイでのサンゴ礁観測調査は、チュラロンコン大学、キングモンクット大学との共同研究として行うが、今年度が本研究の最終年度であるので、共同研究は平成28年9月の観測調査を最後とし、得られた成果の公表に務める。研究調査として沖縄およびタイのサンゴ礁の継続観測を行う。サンゴ礁海水のpHおよびアルカリ度測定を行い、サンゴ礁の海水とサンゴを採取し、実験室に持ち帰る。サンゴが石灰化している時のpHを解明するために、表面電離型質量分析計(TIMS)を使って、サンゴ骨格中のホウ素同位体比の測定を行う。ホウ素同位体から求めたpHとサンゴ礁で測定したpHを比較検討する。さらに、水深1000メートル(温度5度)に生息する深海サンゴおよび有孔虫1個体中のホウ素同位体比をTIMSを使用して測定し、同位体交換平衡定数Kの値を決定する。正確な同位体交換平衡定数Kの値を決定することは意義がある研究である。また、サンゴ骨格(アラゴナイト結晶)中に含まれる微量元素をICP-MS(琉球大学に設置)を使って測定し、サンゴが生息していた海の環境(温度、pH)指標となる元素、同位体の検索を行う。本研究を通して海成炭酸塩を材料とした古pHメ-タ作成を試み、海水酸性化がサンゴ石灰化に与える影響を定量的に評価できると考えられる。今後、学会発表を通して研究成果を公表するとともに、論文作成を行い国際学術雑誌への投稿準備を行い、論文が受理されるように努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年3月に予定していた調査旅行を4月へ延期した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年3月に予定していた調査旅行を平成28年4月に行う。
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