研究課題/領域番号 |
26340052
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研究機関 | 富山県立大学 |
研究代表者 |
坂本 正樹 富山県立大学, 工学部, 講師 (20580070)
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研究分担者 |
戸田 任重 信州大学, 理学部, 教授 (60291382)
花里 孝幸 信州大学, 理学部, 教授 (60142105)
真野 浩行 国立研究開発法人土木研究所, その他部局等, 研究員 (40462494)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | マイクロコズム / 水生生物 / 毒性試験 / 食物網 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,既存の毒性試験(標準試験生物を用いた種レベルの試験)と結果を直接比較できる新たなマイクロコズム試験系を開発し,個体,個体群,群集レベルでの統一的な評価法を確立することである.H27年度は前年度に得られた実験データの再現性の検証と,マイクロコズム内の生物群集の安定性をより高めるため,試験条件の改変を行った.また,餌資源をめぐる競争関係に関する生物の性質(閾値餌密度)をエンドポイントとした評価の有用性を検証した. フラスコレベル試験系については,オオミジンコ初期個体群の齢構成を変えながら実験を行い,構成生物の密度の最大振幅幅,変動係数等を調査した.その結果,系の安定性と準備・実施のし易さを考慮し,オオミジンコ初期個体群は0日齢個体のみから構成されるものが適していると判断した.実際に殺虫剤,除草剤,重金属を添加して個体群動態に対する影響を調べたところ,種レベル試験で影響が検出される濃度での曝露でも,マイクロコズム試験系では影響がみられなかった.これは,化学物質による個体群動態への影響が,ムレミカヅキモとオオミジンコの間での相互作用よりも相対的に小さいことが原因であると考えられる. また,カブトミジンコおよびスカシタマミジンコを対象に,個体群の餌閾値レベルに対する殺虫剤の影響を調査した.この検証のため,殺虫剤フェニトロチオンの曝露(1 μg/L)または無曝露の環境下で内的自然増加率が0になるときの餌濃度の値を推定した.その結果,カブトミジンコの餌閾値レベルは曝露区で有意に高くなった.一方で,スカシタマミジンコの餌閾値レベルには影響がみられなかった.これは,フェニトロチオンに対するスカシタマミジンコの感受性が低いためだと考えられる.このように,ミジンコ種を用いて生物群集や生態系への化学物質の影響を推定する際は,生物の性質も有用なエンドポイントとなることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の目標としていたフラスコレベルでのマイクロコズム試験系の開発についてはおおむね完了することが出来た.また,生存や繁殖以外に,競争や捕食などの生物間相互作用に関連する個体の性質をエンドポイントとした毒性影響評価についても,閾値餌密度が化学物質への曝露によって変化しうるという知見を得た.これらの結果をもとに,より複雑な群集構造の条件下における実験データの蓄積を適宜進めていく.
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今後の研究の推進方策 |
現在,代表者の研究室ではフラスコレベル試験系より実際の生態系に近い大型水槽を用いたマイクロコズム試験の準備に取り掛かっている.屋外での実験であるため,6月から9月頃までの期間で実験を行う予定である. 分担者の真野(土木研)は,引き続き慢性毒性試験や生物間相互作用に関する基礎的データの蓄積に取り組む.また,戸田(信州大)は,マイクロコズム試験によって得られた生物サンプルの安定同位体分析を実施する. 分担者の花里(信州大)は健康上の理由で分担者から外れたが,同氏が担当していた実験生物の維持は,代表者および真野も行っているため,問題は発生していない.今後,同氏には連携研究者として本研究課題に係っていただき,研究の進め方等についての助言をいただく.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は,食物網構造分析をするためのサンプルが少なかったため,安定同位体分析にかかる物品費が予定よりも低かった.また,大型水槽を使用する実験の物品費を平成28年度に繰越し,平成28年度に支出する.
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に執行しなかった予算は平成28年度の実験およびサンプル分析に使用する.主にはマイクロコズム実験用の水槽と学生アルバイト費,化学分析(有機態炭素,無機態炭素,イオン類,栄養塩類,金属類,炭素・窒素安定同位体)に必要な試薬や器具,ガス類の購入をする予定である.
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備考 |
研究代表者の研究室HP.研究課題名と業績一覧を記載.
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