研究課題/領域番号 |
26340056
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
加藤 純雄 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50233797)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 排ガス浄化 / アパタイト / 合成 |
研究実績の概要 |
本研究ではアパタイト型化合物の結晶構造の特徴を利用した排ガス浄化用触媒の調製を目的として、アパタイト型リン酸塩を基本物質とし構造内に金属イオンを含む化合物の合成の検討を行う。本年度は平成26年度に合成したCuイオンを含むアパタイト型リン酸塩の液相法での合成と結晶構造等の熱的変化の検討を行った。 Cuを含むアパタイト型リン酸塩、A10(PO4)6CuxOyHz (A=Ca, Sr, Ba)は、アルカリ土類金属の酢酸塩とアルカリ金属リン酸塩水溶液に水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム水溶液を加えることでpHの調整を行ってアパタイト型A10(PO4)6(OH)2を得た後、Cu(NO3)2水溶液を含浸し1050~1100℃で焼成、急冷することで合成した。A=Ca, x=0.6組成で得られた試料の空気中における熱重量分析の結果、空気中で昇温することにより、重量が 600~850℃で増加し、850~1100℃では減少することがわかった。また降温時は1100~700℃で重量が増加した。さらに高温X線回折法による検討を行うことにより、昇温時には700~900℃でアパタイト構造中のCuがCuOとして析出し、更に1100℃まで昇温するとアパタイト構造中に再固溶することが明らかとなった。平成26年度におけるX線光電子分光法によるCuの化学状態の検討結果より、アパタイト構造中のCuはCu+およびCu2+として存在し、Cu+がより多く含まれることが示されており、この高温域でのCu種の析出・固溶現象はCuイオンの酸化・還元を伴うものであることが推定された。 以上、Cuを含むアパタイト型リン酸塩において、Cu種のアパタイト構造内への固溶・析出挙動を見出すことができた。これは排ガス浄化触媒として利用する際に、高温における耐久性を評価、検討を行う上で重要な知見と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではアパタイト型化合物の結晶構造の特徴を利用した排ガス浄化用触媒の調製を目的として、本年度はアパタイト型リン酸塩の構造内にCuを含む化合物の高温条件下での構造および重量変化の検討を行った。その結果、Cu種のアパタイト構造内への固溶・析出挙動を見出すことができた。これは排ガス浄化触媒として利用する際に、高温における活性金属種の凝集を制御するための重要な知見と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度までに得られた成果を踏まえ、アパタイト型構造内にCuを含む化合物の窒素酸化物、炭化水素等の浄化触媒活性、酸化還元特性などの評価を行い、諸特性および触媒活性との関連を検討する。また、FeなどのCu以外の遷移金属イオンをチャネル内に含む新規アパタイト型リン酸塩の合成を試みるとともに、Cu系同様の結晶構造、熱的特性および触媒活性の評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究において目的とする化合物が合成でき、27年度はその熱的特性の検討により重要な知見が得られた。そこで予定していた触媒活性評価に優先して特性の検討を行ったことから、導入予定であった、触媒活性評価に用いる備品および標準ガス等の消耗品費が予定より少なくなったことにより次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用分に関しては、アパタイト型化合物の調製用反応器、また得られた試料の排ガス浄化活性等に使用する機器用備品等の購入に充当する。また、消耗品として化学試薬、標準ガス等を購入する。
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