研究課題/領域番号 |
26340056
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
加藤 純雄 秋田大学, 理工学研究科, 准教授 (50233797)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 排ガス浄化 / 触媒 / アパタイト |
研究実績の概要 |
本年度は、Cuを含有するアパタイト型リン酸塩を担体としたPt触媒の調製と炭化水素およびNOを含む排ガス浄化反応に対する触媒特性について検討を行った。その結果、少量のCuをアパタイト構造中のチャネルに導入したPt/A10(PO4)6CuxOyHz 触媒(A=Ca, Sr)がCuを含まないPt/A10(PO4)6(OH)2触媒よりもC3H6-NO-O2反応に対し、低温で活性を発現することがわかった。Cu導入量が多い組成領域では導入量の増加にともない、NO還元、C3H6酸化活性が大きく低下することを明らかにした。反応前後の担持Pt触媒のXPS分析の結果、Cu導入量の増加に伴い、アパタイト担体上に担持したPtのうち、金属Ptの割合が低下しており、Cu導入がPtの還元を抑制していることが示された。また、C3H6-O2およびNO-O2反応に対してもCu導入による活性の向上が見られたことから、少量のCuの導入がC3H6の活性化とNO酸化を促進し、C3H6によるNO還元反応に対する活性向上に寄与することを明らかにした。 また、A10(PO4)6(OH)2のチャネル内にFeイオンを導入したA10(PO4)6FexOyHzの合成を試みた。A10(PO4)6(OH)2にFe(NO3)2水溶液を含浸後、焼成、急冷を行った。得られた化合物について各種分析を行った結果、A=Ca, Baの場合にFe導入量の増加とともにアパタイト相の格子定数の増加や赤外吸収スペクトルに変化が認められたことから、構造中のチャネル内にFeを含む化合物の生成が示唆された。 以上、アパタイト型リン酸塩を担体としたPt触媒において、少量のCuの導入により低温活性が向上することを明らかにできた。また、Feをアパタイト構造内への固溶させた化合物を新たに合成することができ、これは新規排ガス浄化触媒用材料の開発を行う上で重要な知見と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Cuを含有するアパタイト型リン酸塩を担体としたPt触媒の調製と炭化水素およびNOを含む排ガス浄化反応に対する触媒特性を検討することにより、Cuの導入効果を明らかにすることができた。また、アパタイト型構造中のチャネル内にFeを含む新規化合物の合成に成功し、その一部について結晶構造解析を行っている。以上のことから、研究がおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究ではアパタイト型リン酸塩A10(PO4)6(OH)2(A=Ca, Sr, Ba)のチャネルサイトを金属イオンで置換した新規化合物の合成を行う予定であった。うち、Feイオンを含む化合物の合成に平成28年度に成功した。今後、合成条件の最適化を行うとともに、詳細な結晶構造のRietveld法による精密化を行う。また、高温、酸化・還元雰囲気下におけるチャネル内のFeの析出・固溶挙動を熱分析および高温X線回折法などにより評価し、Cu含有アパタイト型リン酸塩と比較することで、新規化合物の特徴を明らかにする。さらに当該化合物および貴金属担持した触媒について、C3H6を用いたNO還元反応に対する活性評価を行い、Fe導入の触媒活性に及ぼす影響を検討することで、高活性な触媒を開発するための知見を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究ではアパタイト型リン酸塩A10(PO4)6(OH)2(A=Ca, Sr, Ba)のチャネルサイトを金属イオンで置換した新規化合物の合成を平成26~27年度に行う予定であったが、うち、Feイオンを含む化合物の合成に平成28年度になって成功した。本化合物の結晶構造解析に用いる試料調製や諸物性測定を行った後、その成果を報告するために研究期間の延長が必要となったため次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
新規に合成したFe含有アパタイト型リン酸塩の詳細な結晶構造解析や諸物性の測定を行い、平成29年度中に論文発表の予定である。さらに当初の目的である触媒性能評価も行う。そのための試料調製に使用する試薬、化学状態解析のための機器使用料および成果の学会発表および論文投稿を行うための費用等として使用する。
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