研究実績の概要 |
本年度は平成28年度に引き続き、Cuを含有するアパタイト型リン酸塩A10(PO4)6CuxOyHz (A=Ca, Sr, Ba)にPdを担持した触媒の炭化水素によるNO還元特性の検討を行った。その結果、アパタイト型リン酸塩担持Pd触媒では、最大NO転化率はA=Ba>Sr>Caの順となり触媒担体の塩基性がNO還元特性に影響していることが示唆された。またCuを導入した場合にはA=Ca組成で、NO還元開始温度が低下することを明らかにし、アパタイト型構造中のチャネルサイトへの金属イオンの導入が触媒活性の向上に寄与することを示した。 また、A10(PO4)6(OH)2のチャネル内にFeイオンを導入したA10(PO4)6FexOyHzの合成を試みた。本研究では平成26年度にアパタイト型リン酸塩へのCu水溶液の含浸後熱処理を行う方法でアパタイト型構造のチャネル内にCuが導入できることを見出している。本年度はFeの導入に本方法を適用した。A10(PO4)6(OH)2にFe(NO3)2水溶液を含浸後、焼成、急冷を行い、得られた化合物について粉末X線回折データを用いた格子定数の測定と赤外吸収分析を行った。A=Caの場合にFe導入量の増加とともにアパタイト相の格子定数はa軸長がわずかに減少し、c軸長が増加した。これは、FeイオンがCaサイトを置換した場合の格子定数変化とは異なっていた。また調製時のFe量の増加とともにチャネル内のFeサイトの占有率が増加し、チャネル内の水酸基による赤外吸収バンドの強度が減少したことから、アパタイト構造のチャネル内にFeが導入できることが示唆された。本研究により、Feをアパタイト構造内への固溶させた化合物を新たに合成することができ、これは新規排ガス浄化触媒用材料の開発を行う上で重要な知見と考えられる。
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