実施した研究概要 本年度は、1年目に実施した200kHz超音波による難分解性汚染物質の液相分解、さらに2年目に実施した2.4 MHz超音波によるミスト生成とその界面反応を利用した有機汚染物質の気相分解について、これら相の異なる汚染物質を同時に分解できる最適周波数の検討と最適な反応系の提案を行った。
得られた成果 液相での熱分解に効果的な数百kHzから、超音波霧化に一般に用いられる数MHzまでの周波数に対して、超音波ミスト生成の有無と粒径分布の確認を行った。超音波の照射位置を調整することにより、200 kHz以上の周波数を持つ超音波であれば、気相反応に寄与しうるサブミクロンオーダーのミストを十分量発生できることが示唆され、熱分解と超音波霧化を同時に起こせる最適な周波数として430 kHzを選択した。疎水性または親水性性質を示す2種のアルデヒドを気相分解後に水中に捕捉された分解生成物のモデル物質として選択し、430 kHz超音波と短波長紫外光を用いた分解実験を行った。その結果、疎水性性質を示すアルデヒドは主に液相での熱分解により、また、親水性性質を示すアルデヒドはミストへの取り込みと気相分解により効果的に無機化しており、本周波数の有効性が示唆された。一方で、流通系においては気流とともにミストが系外に排出される問題が残っていたため、多孔性テフロン(PTFE)チューブにより汚染空気を反応系内に流通させる系を構築した。ミストの存在量が十分であれば、多孔性PTFEチューブを通してガス交換とミスト界面での反応が起こせることが明らかとなり、ミストの系外への排出も抑制できた。さらに本年度作製したサイクロン型反応器によりミストを一定空間に濃縮し、そこに多孔性PTFEチューブを効果的に配置することで、単一周波数超音波を用いた気相、液相汚染物質の高効率同時除去手法が十分構築できる可能性が示唆された。
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