世界的にも地下水中の硝酸イオン濃度が高い地域は多く、飲用のための処理方法が必要である。特に開発途上国では、エネルギー消費が少なく運転や維持管理が容易な方法が望まれている。水素酸化脱窒は独立栄養細菌による脱窒反応であり、有機物添加が不要なことから浄水処理への適用が検討されてきた。しかしこの処理系内に従属栄養細菌などが共存すれば、より効率的な脱窒が可能であると考えられ、事実多くの研究者が複合的な脱窒の可能性を指摘している。本研究は、水素酸化脱窒リアクター内に出現する複合型脱窒プロセスの機構を、水質分析、ガス分析、微生物群集解析から明らかとし、その知見を基に途上国適応型で効率的な運転装置の開発を行うことを目的とする。 この目的に沿って、本研究では 1.水素酸化脱窒反応が生じている微生物付着担体挿入型反応槽の運転条件を意図的に大きく変化させることで生じるレスポンスを、水質分析とガス分析ならびに微生物群集構造解析により明らかとすること、2.マイクロバブル発生装置を用いて水素ガス供給を行い、水素ガス供給方法の違いが脱窒にどのように影響するかを明らかとし、効率的なリアクターを作成することとした。 本年度は、昨年から用い始めたトール型の反応装置を用いて、水素ガスのマイクロバブル送入と通常のエアストンによる送入方法との比較検討を継続するとともに、反応槽内に出現する微生物群集についての検討も行った。 マイクロバブル送入により、添加した水素ガス量当たりに除去される窒素量で定義される水素利用効率は格段に向上することを明らかとしたが、このように水素利用効率が向上したリアクター内に出現する微生物は、水素が十分量供給されたリアクターに出現する微生物とは異なることが見いだされた。
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