研究課題/領域番号 |
26340060
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松宮 弘明 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 准教授 (10362287)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アドミセル / 界面活性剤 / 金属ナノ粒子 / 常温溶融塩 / クロロベンゼン / 5-ヒドロキシメチルフルフラール |
研究実績の概要 |
天然の酵素や微生物を環境浄化に利用する試みは数多いが、一般に生物分解は操作条件に敏感であり、また汚染物質との接触効率の向上が難しく、長時間の処理を要するなどの問題点がある。本研究では、これらの諸問題をバイオ技術とは別のアプローチで解決することを考え、酵素様活性を示す新規有機ホスト無機複合体を調製し、これに水中の汚染物質を濃縮した後、そのまま分解・低毒化する高効率な環境浄化システムの構築を目指した。 地下水中の有害有機塩素化合物の処理を想定して、アルキルアンモニウム系界面活性剤の分子凝集体とFe/Ni金属粒子を多孔質シリカゲルの細孔内に担持した有機/無機複合体について、環境浄化材料としての可能性を検討しており、これまでパークロロエチレンを例に取り、その捕集および分解挙動を検討してきた。今年度は対象をクロロベンゼン類に拡張し、当該材料の適用性を調査した。塩素を2~6個有するクロロベンゼン類は11種類あるが、いずれも界面活性剤凝集体に速やかに捕集され、その内2種の例外(ヘキサクロロベンゼンおよび1,2,4,5-テトラクロロベンゼン)を除きFe/Ni金属粒子により完全に還元的脱塩素分解された。 一方、アルキルアンモニウム系溶融塩を反応媒体として用い、セルロース系バイオマスの資源化処理についても検討を進めており、これまでセルロース加水分解生成物であるグルコースから5-ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)を60%程度の収率で合成できる方法を開発している。HMFは高エネルギー密度燃料やプラスチックの原料となり、バイオマス有効利用において重要な中間物質として注目されている。今年度は工程を遡り、当該溶融塩中でのセルロース加水分解を重点的に検討した。その結果、HMF合成で使用したグリコール酸をシュウ酸に置き換え、反応温度や時間を調節すると、30%程度ではあるがセルロース加水分解が進行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の第一の目的である水中汚染物質の捕集分解については、これまでは単一の化合物のみを対象として検討してきたが、今年度は適用対象を拡張できた。また、バイオマスの資源化については、これまでグルコースを出発原料として検討してきたが、今年度は工程を遡り、セルロースを出発原料にしてもある程度の反応進行を確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
有機塩素化合物の捕集分解に関して、クロロベンゼン類の中で不完全にしか処理できなかった化合物があった。完全処理に向けて、反応を担う金属粒子の組成などを検討する。一方、セルロース系バイオマスの資源化については、セルロース加水分解の収率向上と生成物であるグルコースから5-ヒドロキシメチルフルフラールを得るまでの処理工程の連続化を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は239円と小額であり、特別な事情・理由はございません。
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次年度使用額の使用計画 |
当初より予定されている次年度予算と併せて使用します。
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