研究実績の概要 |
平成28年度(最終年度)については,平成26~27年度に実施した大気中二酸化炭素を用いた高pH浸出水の中和技術(小粒径および大粒径砕石層での炭酸中和)の結果を基に,さらに効率的に大気中二酸化炭素を吸収させる技術を検討した。具体的には,化学工学分野で利用される規則充填材(気液接触材)を用い,単位体積当たりの気液接触面積を増加させた炭酸中和試験を実施した。流入水pH10.5,11,11.5の3段階で試験を行った。実際の処分場で見られるpH10.5程度の浸出水を模擬した溶液を,上記接触材充填を行った実験槽にて,試験を行った結果,流入水量2000㎜/日(降雨量換算)の条件でも,流出水pHは排水基準8.6を下回っていた。長期的な高pH浸出水の流出が継続する処分場において,この機構を導入することで,維持管理の環境安全性が確保できる可能性が示唆された(水処理における中和後pHがオーバーシュートする可能性がない)。流入水pHがpH11,pH11.5程度と高い場合は,提案する構造だけでは,排水基準pH(8.6)を満足することは難しいが,酸消費量(アルカリ度)の減少量から,水処理施設の負荷低減には大きな効果を示すと考えられた。 今年度の試験結果より,浸出水集排水管末端に大気接触効率を上げる構造を組み込むことで,高pH浸出水に対応できる可能性が確認できた。今後は,処分場底部集排水管の末端部構造の具体化,広範囲接触層への浸出水の均等な散布方法など,実用化にむけた検討を継続する。
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