研究課題/領域番号 |
26340065
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研究機関 | 和歌山工業高等専門学校 |
研究代表者 |
米光 裕 和歌山工業高等専門学校, 物質工学科, 教授 (20290778)
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研究分担者 |
岸本 昇 和歌山工業高等専門学校, 物質工学科, 教授 (50280433)
奥野 祥治 和歌山工業高等専門学校, 物質工学科, 准教授 (60458073)
土井 正光 和歌山工業高等専門学校, 物質工学科, 教授 (30217608)
楠部 真崇 和歌山工業高等専門学校, 物質工学科, 准教授 (40403761)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ホルムアルデヒドジスムターゼ / ホルムアルデヒド分解除去技術 |
研究実績の概要 |
今年度の研究計画では、(1)我々が先に分離したホルムアルデヒド(FA)分解菌Metylobacterium fujisawaense FD-1株由来FAジスムターゼの精製と機能・構造解析、(2)FD-1株由来FAジスムターゼ及びFAジスムターゼ生産菌(遺伝子組換え体含む)の固定化法の検討を目的にした。 目的の(1)では、まずFD-1株由来FAジスムターゼを効率よく精製するために、昨年度FD-1株より単離したFAジスムターゼ遺伝子をpETベクターの6×His領域の下流に連結した遺伝子組換えプラスミドを構築し、大腸菌DE3株に導入後、その菌体抽出液よりNiカラムにて酵素の精製を数回試みたが、目的の酵素は全く得られなかった。そこで、計画を変更し、FD-1株(野生株)よりFAジスムターゼを硫酸アンモニウム沈殿および疎水性クロマトグラフィーにより部分精製した。このFAジスムターゼを用いて反応速度論的解析を行ない、ミカエリス定数(Km)と活性の至適温度を決定した。構造については、部分精製した酵素のメタノール抽出液のHPLC分析よりNAD(H)が結合していることが示唆された。また、FD-1株由来FAジスムターゼは、既知FAジスムターゼとのアミノ酸レベルでの相同性解析より、その活性部位等が保存されてたことから、X線構造解析をする意味があまりないと判断し、コンピュータシミュレーションに変更した。次に目的の(2)では、FA含有排水処理の実用化技術の開発を考慮し、精製酵素や遺伝子組換え大腸菌を用いた固定化を検討する前に、FD-1株(野生株)の固定化方法について検討することとし、実験した結果、FD-1株の固定化にはパイル織物生地への新規固定化法が適当との新しい知見が得られた。一方、昨年度の研究成果を日本農芸化学会2016年度大会(札幌)等で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度の研究の目的は、(1)ホルムアルデヒド(FA)分解菌Metylobacterium fujisawaense FD-1株由来FAジスムターゼの精製と機能・構造解析、(2)FAジスムターゼ及びFAジスムターゼ生産菌の固定化法の検討であった。今年度の研究実績は、上記【研究実績の概要】で述べた通り、(1)では、当初計画のpETベクターを利用した遺伝子組換え大腸菌からのFAジスムターゼ精製がうまくいかなかったので、途中より計画を変更し、FD-1株(野生株)から部分精製したFAジスムターゼのミカエリス定数および至適温度を決定した。またFAジスムターゼの結合補酵素を示唆した。ただし、実験に用いた酵素は不純物が含まれているので、より純度の高い酵素を精製した上で機能・構造解析する作業が残っている。立体構造解析ではコンピータシミュレーションに変更した。(2)では、FA含有排水処理の実用化技術の開発を優先し、FD-1株(野生株)の固定化としてパイル織物生地への新規固定化法が適しているという新しい知見が得られた。しかし、酵素や遺伝子組換え体の固定化については実施できなかった。昨年度の研究成果は日本農芸化学会2016年度大会(札幌)等で発表した。以上の実績より「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度(最終年度)は、(1)FAジスムターゼをFD-1株(野生株)からカラム分離等により、より純度の高い酵素を精製する。なお、酵素の精製では、長岡技術科学大学生物機能工学課程の福田雅夫教授に助言をいただくことになっている。次いで精製したFAジスムターゼの反応速度論的解析(ミカエルス定数、基質阻害、生成物阻害)並びに反応特性(基質特性、至適温度・至適pH、温度安定性・pH安定性)等の特性を明らかにする。(2)固定化菌体による液相中FA分解の実用化技術の開発に向けたデータを得るために、平成27年度に得られた新規固定化法を用いて連続操作によるFA分解を検討する。また、FD-1株(野生株)、精製酵素、または遺伝子組換え大腸菌、およびそれらの固定化物を用いた気相中FA分解の検討も行う。得られた成果は学会等で口頭発表するとともに、学会誌に投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたX線構造解析を行なわなかった分の残金がでたが、ほぼ予定通り使用したと考えている。
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次年度使用額の使用計画 |
X線構造解析については、【研究実績の概要】で説明したとおり、コンピュータシミュレーションに変更したので費用は発生しないが、その分を酵素精製のカラム代として使用する予定である。
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