研究課題
Penicillium sp. CHY-2株による炭化水素類化合物の分解特性の評価を行ったところ、CHY-2株は炭素数C10を特に分解した。また、デカンを指標として最適な分解条件の検討を行ったところ、グルコース1 g/L、pH6、Tween 80有りの培養条件でCHY-2株がデカンを効果的に分解することが分かった。さらに、CHY-2株は模擬汚染土壌中で効果的に4-tert-ブチルフェノールを分解するということが明らかになった。試供石油系炭化水素化合物(ブチルシクロヘキサン、エチルベンゼン、ブチルベンゼン、アセナフテン、2.2.4-トリメチルペンタン、オクタン、デカン、ドデカン、ナフタレン)を供した条件において、ギボウシとオダマキの耐性実験を行った結果、ギボウシは葉の変色がオダマキと比べて少なかった。そのため、微生物源としてギボウシの根圏土壌を選択した。また、ギボウシの根圏土壌菌の遺伝子解析による同定の結果、多様な細菌類及び真菌が根圏土壌に存在することが分かった。現在、20種類の菌株の同定を完了している。今回、細菌類を主に同定したため、真菌と植物の菌根共生も踏まえ、今後さらに真菌類の同定を進める必要があると考えられる。一方、アルキルフェーノル類や石油系炭化水素化合物の分解に関与する根圏微生物を特定するため、単離菌株を用いた分解実験を行う方針である。H27年度の報告においてCHY-2株の分解に関与する遺伝子としてバニリルアルコールオキシダーゼを挙げたが、部分精製した細胞外分泌酵素を用いた実験でもバニリルアルコールオキシダーゼの酵素活性を確認することができたため、バニリルアルコールオキシダーゼ遺伝子が分解に関与している可能性が示唆された。さらに、CHY-2株の培養液を用いた酵素精製実験の結果、リグニンペルオキシダーゼを精製することができたため、リグニンペルオキシダーゼコード遺伝子も分解に関与している可能性が高い。現在、精製酵素の諸性質を詳細に検討している。
2: おおむね順調に進展している
H27年度研究目的であった分解遺伝子の解明、植物と微生物の分解における相関関係の解明に関する実験が進展している。特に、ギボウシの根圏土壌菌の遺伝子解析を駆使して、多様な細菌類及び真菌が根圏土壌に存在することを確認し、さらに20種類の菌株及び10種類のカビの同定を完了するなど研究の進展が見られた。
分解関与遺伝子の同定を中心テーマとして研究を推進する。アメリカ国立医学図書館付属国立生物工学情報センターのヌクレオチド検索機能を用いて、炭化水素分解菌(寒冷型および非寒冷型分解菌)の遺伝子の塩基配列を得る。これらから選別して炭化水素分解遺伝子の塩基配列に基づいたプライマーを設計する。その後、遺伝子のクローニングを行う。一方、分解遺伝子の解明に必要な全ゲノム解析は次世代シーケンサーを保有していないため、他機関や大学の分析設備を利用して行う予定であるが、うまく遂行できない場合は外部に依頼し速やかに研究が進むように努力する。また、H27年度研究結果を基に根圏土壌中の細菌単独もしくは菌類との組合せによる分解促進効果を検証していく。特に分解に関与する微生物を特定することに力を注ぐ予定である。
すべて 2016 2015 その他
すべて 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 5件、 査読あり 10件、 謝辞記載あり 8件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 7件、 招待講演 1件) 備考 (2件) 産業財産権 (1件)
CLEAN-Soil, Air, Water
巻: なし
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